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March 6, 2025 Vol. 392 No. 10

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ダノン病に対する AAV9.LAMP2B 遺伝子治療の第 1 相試験
Phase 1 Study of AAV9.LAMP2B Gene Therapy in Danon Disease

B. Greenberg and Others

背景

ダノン病は,まれな単一遺伝子性,X 連鎖性の心筋症であり,リソソーム関連膜蛋白 2(LAMP2)をコードする遺伝子,LAMP2 の変異に起因する.男性患者における主要な表現型は,進行性心肥大,心機能障害,早期死亡である.この疾患に直接的な治療法はない.

方 法

第 1 相試験で,LAMP2 のアイソフォームの 1 つをコードする導入遺伝子 LAMP2B を含む,遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス血清型 9 である RP-A501 の単回点滴静注の安全性と有効性を評価した.主要転帰は,RP-A501 の安全性と毒性,心筋における LAMP2 の形質導入と蛋白発現,心不全症状の安定化または軽減,心臓の構造および機能の安定化または改善とした.症状の軽減または安定化の持続,RP-A501 に対する免疫学的反応,末期心不全,全生存を重要な副次的転帰とした.心疾患の血清学的マーカーの改善,患者報告アウトカム,QOL 評価などを探索的転帰とした.

結 果

ダノン病の男性患者 7 例に RP-A501 を点滴静注した.5 例は 15 歳以上であり,2 例は 11~14 歳であった.全例が,プレドニゾン(prednisone),タクロリムスまたはシロリムス,リツキシマブによる一時的な免疫調節レジメンを受けた.この論文では,第 1 相試験の投与後 24~54 ヵ月間のデータを報告する.これには長期追跡試験の中間データが含まれる.1 例が,血小板減少症と急性腎障害を伴う補体介在性血栓性微小血管症(グレード 4)を発症した.3 例に,グルココルチコイドに関連する,ダノン病関連の骨格筋ミオパチーの増悪(グレード 3)が認められた.ベースライン時に左室収縮機能障害を有していた 1 例は,進行性心不全をきたし,点滴静注後 5 ヵ月で心移植を受けた.ベースライン時に左室駆出率が正常であった 6 例では,心臓における LAMP2 蛋白発現,左室心筋重量係数のベースラインからの低下または安定化,左室駆出率の維持,心筋トロポニン I 値とヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント(NT-proBNP)値の低下または安定化が認められた.24~54 ヵ月の時点で全例が生存しており,副作用は完全に消失していた.

結 論

RP-A501 の単回点滴静注は安全であると思われ,心臓における LAMP2 発現と,投与後 24~54 ヵ月の期間における臨床的改善の所見と関連した.(ロケット ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03882437)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 972 - 83. )