- 目 次
-
This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
March 7, 2002
Vol. 346 No. 10
ORIGINAL ARTICLES
-
生殖補助医療による受胎後の先天異常
Birth Defects after Assisted Conception卵細胞質内精子注入法と体外受精は,不妊治療にますます利用されるようになった.このような技術を用いて受胎した児における先天異常のリスクが,自然受胎した児に比べて高いかどうかは不明である.この研究では,卵細胞質内精子注入法または体外受精により受胎した児は,1 歳までに診断される重大な先天異常のリスクが自然受胎児の 2 倍も高いことが明らかになった.これらのリスクの増加は,可能性のある交絡因子で調整したあとにも認められ,これらの児における先天異常に関して,監視が強まったためではないと考えられた.
卵細胞質内精子注入法と体外受精は,重大な先天異常のリスク増加と関係がある.この事実は,これらの技術の利用を計画している患者と話し合うべきことである. -
補助生殖医療技術を用いて受胎した新生児の出生時低体重および超低体重
Low and Very Low Birth Weight in Infants Conceived with Assisted Reproductive Technology補助生殖医療技術により受胎した新生児における出生時低体重のリスクの増加は,主としてこのような技術に関連した多胎妊娠率の高さに起因する.この研究は,地域住民をベースにしたデータを用いて,この技術を用いて受胎した単生児および多胎児での出生時低体重の率と,一般集団の率とを比較した.補助生殖医療技術を用いて受胎した新生児は,1997 年に米国で 20 歳以上の母親が出産した全新生児の 0.6%であったが,補助生殖医療技術を用いて受胎した新生児は,出生時低体重児の 3.5%,出生時超低体重児の 4.3%を占めていた.
補助生殖医療技術の利用は,出生時低体重児および超低体重児の数の不均衡である原因を説明している.この原因は,主に多胎妊娠の増加したことであるが,また単生児の出生時低体重率の高まりも一因である. -
末梢血幹細胞レシピエントにおけるドナー由来の肝細胞と上皮細胞
Hepatocytes and Epithelial Cells of Donor Origin in Recipients of Peripheral-Blood Stem Cells兄弟から末梢血幹細胞移植を受けた女性 6 例の肝臓,皮膚,胃腸管の生検検体において男性細胞を探索した.これら全 3 種の組織中に Y 染色体を含む上皮細胞と肝細胞が少数みられた.二重染色ではサイトケラチン(上皮細胞のマーカー)と Y 染色体が同じ細胞内に存在することが示された.
これらの研究は,幹細胞は多種の細胞系に分化することができるということの新たな証拠である.性別の印がついた細胞が単純にドナーのリンパ球では絶対ないと確証するのはむずかしいという観点からこの結果をみなければならない.この注意を念頭に置いたうえで,著者は血液にはそのような万能細胞が含まれていると説得力をもって論じている.
BRIEF REPORT
-
肺炎球菌性肺炎におけるレボフロキサシン耐性
Levofloxacin Resistance in Pneumococcal Pneumoniaこの論文では,レボフロキサシンによる経験的治療が失敗した肺炎球菌性肺炎患者 4 例について述べている.これらの患者では,肺炎球菌分離株がレボフロキサシン耐性であり,このうち 2 例では,この耐性はフルオロキノロン系で最近行われた治療のさいに得られたようであった.
市中肺炎の経験的治療に,レボフロキサシンのようなフルオロキノン系が現在一部の患者に使用されていることから,これらの症例報告は懸念の種となる.現在のところ,肺炎球菌のフルオロキノロン感受性検査は日常的には行われていない.しかし,日常的な感受性検査は必要かもしれない.
IMAGES IN CLINICAL MEDICINE
-
Images in Clinical Medicine:肺低形成の新生児における広範囲空気塞栓症
Images in Clinical Medicine: Massive Air Embolism in a Neonate with Pulmonary Hypoplasiaこの女児には出生時,左水気胸と顕著な肺低形成がみられ,肺低形成は機械人工換気で治療された.症状悪化が続いたあと,女児は高頻度振動換気を受けた.動脈内圧の波形は弱く,外科的診査では,頸動脈に空気が認められたが,血液は認められなかった.
MEDICAL PROGRESS
-
医学の進歩:抗リン脂質症候群
Medical Progress: The Antiphospholipid Syndrome抗リン脂質症候群は,凝固性が亢進する自己免疫疾患であり,さまざまなリン脂質またはリン脂質結合蛋白に対する自己抗体が存在することが特徴である.自己抗体には,抗カルジオリピン抗体,ループス性抗凝固因子抗体,および β2-糖蛋白 I(リン脂質結合蛋白)に対する抗体がある.これらの自己抗体は,凝固促進と抗凝固の両方の作用を有するが,凝固促進作用のほうが優勢であるため,静脈血栓症・動脈血栓症の症候群,および流産を引き起す.
CLINICAL PROBLEM-SOLVING
-
Clinical Problem-Solving:どこから来たのですか?
Clinical Problem-Solving: Where Are You From?ヒト免疫不全ウイルスに感染した 52 歳の男性が,発熱のため受診した.この男性は,15 年前にガイアナから移住してきた.貧血と血小板減少症を長く患っているが,日和見感染の病歴はない.
SOUNDING BOARD
-
Sounding Board:卵細胞質移植
Sounding Board: Ooplasmic Transfer卵細胞質移植は,体外受精後の卵母細胞着床が繰り返し失敗することが原因である不妊に対する,新しい治療アプローチである.卵母細胞の生存可能性を回復させるため,正常ドナーの卵細胞質をマイクロピペットで採取し,不妊女性の卵母細胞に注入した.その結果得られた卵母細胞は,細胞質内に精子を注入すると受精し,両女性のミトコンドリア DNA を有していた.著者は,不妊治療のこの新しいアプローチの,可能性のある利益とリスク,そして倫理面について論じている.