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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 30, 2002
Vol. 346 No. 22

  • 1 型糖尿病患者の親族における非経口インスリン
    Parenteral Insulin in Relatives of Patients with Type 1 Diabetes Mellitus

    1 型糖尿病患者の親族における非経口インスリン

    1 型糖尿病の高リスク者は膵島細胞抗体量,インスリン抗体量および遺伝子的検討に基づいて同定しうる.この研究の研究者らは糖尿病患者のリスクの高い一親等と二親等の親族 339 人(平均年齢 11.2 歳)を観察,あるいは 1 日 2 回のウルトラレンテインスリンの低用量皮下投与と年 1 回の 4 日間連続インスリン静脈内投与の併用のいずれかに無作為に割付けた.試験終了までに,介入群では被験者 69 人,観察群では 70 人で糖尿病と診断され,糖尿病への進行の年率は介入群では 15.1%,観察群では 14.6%であった.
    この試験で使用したインスリンの用量およびレジメンは,リスクの高い人の 1 型糖尿病を遅延あるいは予防しなかった.

  • 新たに発症した 1 型糖尿病におけるモノクローナル抗体
    Monoclonal Antibody in New-Onset Type 1 Diabetes Mellitus

    1 型糖尿病において β 細胞を破壊する機序には細胞傷害性 T 細胞と可溶性 T 細胞産物の両方が関与している.この研究では,新たに糖尿病と診断された患者 24 例を T 細胞抗原である CD3 に対する非活性化モノクローナル抗体の投与群,あるいは抗体を投与しない対照群に割付け,すべての患者を 1 年間追跡した.モノクローナル抗体による治療では,患者 12 例中 9 例でインスリン反応が維持または改善したが,一方対照群患者では 12 例中わずか 2 例にしかインスリン反応の維持はみられなかった.モノクローナル抗体で治療した患者でインスリン必要量が有意に減少した.
    抗 CD3 抗体による治療は,早期 1 型糖尿病で起るインスリン産生の低下を遅延させるかもしれない.

  • 喘息における気道平滑筋への肥満細胞浸潤
    Mast-Cell Infiltration of Airway Smooth Muscle in Asthma

    喘息における気道平滑筋への肥満細胞浸潤

    喘息は気道の慢性炎症性疾患であるが,厳密に炎症のどの要素が喘息の表現型の発現に関連しているかは不明である.この研究では,健常被験者,喘息患者,好酸球性気管支炎患者の気道生検より,気道平滑筋中の肥満細胞数を測定した.喘息患者の気道平滑筋中の肥満細胞数は,健常被験者や好酸球性気管支炎患者に比べて有意に多かった.好酸球性気管支炎は喘息に類似した疾患であるため,適当な対照となる.
    これらのデータは,喘息研究の中心を,気道炎症に関する全般的研究から,気道平滑筋の異常に関する研究へと変えるかもしれない.

  • 慢性 B 型肝炎患児に対するラミブジン
    Lamivudine in Children with Chronic Hepatitis B

    慢性 B 型肝炎患児に対するラミブジン

    慢性 B 型肝炎は,成人において抗ウイルス薬であるラミブジンでうまく治療することができる.この国際的無作為二重盲検プラセボ対照試験では,インターフェロン療法に反応しなかった例を含む B 型肝炎患児に,ラミブジンまたはプラセボを 52 週間投与した.ウイルス学的奏効率はラミブジン群で 23%,これに対しプラセボ群では 13%であった(P=0.04).非盲検法での 2 年間の延長試験が,現在行われている.
    インターフェロンもラミブジンも共にこの患者群において特効薬ではない.ラミブジンは,インターフェロンと同程度の有効性をもつ代替治療薬であり,慢性 B 型肝炎患児にとってより忍容しやすいかもしれない.

  • Special Article:病院の看護の充足度とケアの質
    Special Article: Nurse-Staffing Levels and Quality of Care

    病院の経費削減努力による看護師の不足と看護時間の短縮は,患者の合併症や死亡の可能性を大きくするのではないかという懸念を増大させている.この研究では,1997 年における米国 11 州の 799 病院のデータを用いて,看護の充足度とケアの質の関係を検討した.正看護師の割合が高いほど,または 1 日当りの正看護師によるケア時間が長いほど,上部消化管出血,院内感染肺炎,ショックや心停止などの,特定の有害な転帰の発生率が低くなることが明らかになった.
    既存資料の欠点によりさまざまな限界があるものの,これらの知見は,患者を保護しケアの質を改善するためには十分な数の看護師が重要であることに注意を集めさせる.

  • 最近の概念:クリプトスポリジウム症
    Current Concepts: Cryptosporidiosis

    最近の概念:クリプトスポリジウム症

    クリプトスポリジウムは,細胞内寄生虫で胃腸上皮に感染して,免疫不全宿主では生命を脅かしかねない激しい下痢を引き起す.この“Review Article”ではクリプトスポリジウム症の臨床症状,病態生理学および診断について概説する.著者らはこのよくみられる感染に対する予防方法を力説している.効果的な治療法はない.