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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

July 11, 2002
Vol. 347 No. 2

  • 変形性膝関節症に関節鏡検査?
    Arthroscopy for Osteoarthritis of the Knee?

    変形性膝関節症に関節鏡検査?

    二重盲検試験において変形性膝関節症患者 180 例を,膝に対する関節鏡視下切除,関節鏡視下洗浄あるいはプラセボ(疑似)手術を受ける群に無作為に割付けた.痛みと身体機能の転帰は,24 ヵ月間にわたる複数の時点で評価したが,3 群とも同様のままであった.
    関節鏡検査は変形性膝関節症に対して一般に行われているが,この慎重に行われた盲検比較対照試験により,関節鏡視下切除によっても,関節鏡視下洗浄によってもなんらかの改善を示す証拠は認められなかった.3 群すべてで観察された中等度の改善は,内科的治療や変形性関節症の自然経過を反映しているのかもしれない.

  • C 型肝炎治療後の脾リンパ腫の寛解
    Regression of Splenic Lymphoma after Treatment for Hepatitis C

    C 型肝炎治療後の脾リンパ腫の寛解

    有毛リンパ球を伴う脾リンパ腫患者 9 例に,C 型肝炎ウイルス(HCV)感染のためインターフェロン α を投与した.7 例では,その後 HCV 感染は認めず,リンパ腫の寛解がみられた.2 例では,抗ウイルス療法の追加後にはじめてリンパ腫が寛解した.HCV 感染の認められない,有毛リンパ球を伴う脾リンパ腫患者 6 例では,同様の治療が効果を示さなかった.
    この研究は,慢性 B 細胞性リンパ増殖性疾患を有する患者が,クリオグロブリン血症と HCV 感染に対するインターフェロン α による治療後に血液学的反応を示したあとに行われた.これらの知見は,HCV 感染がこの亜型のリンパ腫の病因に関与している可能性を示唆している.

  • THOX2 不活性化突然変異と先天性甲状腺機能低下症
    THOX2-Inactivating Mutations and Congenital Hypothyroidism

    THOX2 不活性化突然変異と先天性甲状腺機能低下症

    未治療の先天性甲状腺機能低下症は,重度の発育障害を引き起す.この論文の著者らは,2 種の蛋白質,甲状腺酸化酵素 1 および甲状腺酸化酵素 2 がヨード有機化のプロセスに関与することから,ヨード有機化障害を有する乳児における甲状腺酸化酵素系の欠損を同定することを試みた.甲状腺酸化酵素 2 の遺伝子である THOX2 において,2 つの対立遺伝子の機能喪失突然変異が永続性先天性甲状腺機能低下症患者 1 例にみられ,単一の対立遺伝子突然変異が,一過性先天性甲状腺機能低下症患者 3 例にみられた.
    THOX2 遺伝子の不活性化突然変異は,結果的に甲状腺ホルモン合成を完全に阻止し,重度の永続性先天性甲状腺機能低下症に関与する.一方,単一対立遺伝子突然変異は,より軽度の一過性先天性甲状腺機能低下症を引き起す.これは,一過性先天性甲状腺機能低下症の原因となる,発見されたはじめての遺伝子突然変異であろう.

  • 再発性糸球体腎炎による腎移植片喪失のリスク
    Risk of Allograft Loss from Recurrent Glomerulonephritis

    腎移植後の再発性糸球体腎炎は,移植片喪失にいたる可能性がある重篤な合併症である.オーストラリアとニュージーランドの透析と移植登録のデータに基づくこの研究では,末期腎疾患および最初の腎移植にいたった,生検により確定された糸球体腎炎を有する患者 1,505 例の,再発性糸球体腎炎による移植片喪失に対する危険因子の発生と時期を検討した.糸球体腎炎の再発による移植片喪失は,レシピエント 52 例に生じた.移植 10 年後,再発は,慢性拒絶反応および,腎移植片が機能する状態での死亡に次いで,3 番目に頻度の高い移植片喪失の原因であった.
    原発性糸球体腎炎患者に対する腎移植の方法の変更が必要となるような危険因子は同定されなかった.

  • 医学の進歩:シスチン蓄積症
    Medical Progress: Cystinosis

    医学の進歩:シスチン蓄積症

    シスチン蓄積症は,まれな常染色体劣性リソソーム蓄積症であり,リソソームからのシスチンの輸送障害が原因である.シスチン蓄積症は,体中に結晶の沈着を生じ,治療しなければ,成長障害,深刻な代謝異常,末期腎疾患の早期発症,甲状腺機能不全および多臓器不全をもたらす.今回の総説で述べられているように,この疾患へのわれわれの理解と治療に大きな進展がもたらされた.システアミンの投与は,シスチン蓄積症の経過を顕著に改善した.システアミンの各分子がシスチン分子の半分(システイン)と結合することができ,リソソームからのシスチンの排出を促進するのである.また,シスチン蓄積症の遺伝子 CTNS(シスチノシンと呼ばれる蛋白をコード)は,1998 年に単離され,この疾患を理解するための新しい道を開いた.