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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

August 8, 2002
Vol. 347 No. 6

  • HIV の新規感染患者における抗レトロウイルス薬耐性
    Antiretroviral-Drug Resistance among Newly HIV-Infected Patients

    HIV の新規感染患者における抗レトロウイルス薬耐性

    北米 10 都市において新たにヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者 377 例の研究では,抗レトロウイルス薬耐性の頻度が,1995~98 年の 3.4%から 1999~2000 年の 12.4%に増加していた.初診時における多剤耐性の頻度も増加し,1.1%から 6.2%になった.初回の抗レトロウイルス療法実施後,耐性ウイルスに感染した患者ではウイルス抑制の達成までに時間がかかり,これらの患者ではウイルス学的な失敗までの時間が短かった.
    新たに診断された HIV 感染患者において薬剤耐性ウイルスの頻度が増加している.このことは,耐性ウイルスの高い伝達率を反映している.現在では,治療前の薬剤耐性試験は,新たに感染し,抗レトロウイルス療法を受けたことのない患者においても必要である.

    • 脳卒中後の手首および手指の痙縮に対するボツリヌス毒素の筋肉内注射
      Intramuscular Injection of Botulinum Toxin for Wrist and Finger Spasticity after a Stroke

      A 型ボツリヌス毒素の筋肉内注射は,脳卒中後の痙縮患者の治療に用いられてきたが,その有効性はいまだに明らかでない.脳卒中後の痙縮患者を対象とした,この無作為二重盲検プラセボ対照試験では,屈筋緊張の亢進している手首や手指の筋肉内にボツリヌス毒素を 1 回注射することによって,12 週間にわたって筋緊張が低下し身体の機能障害が改善された.ボツリヌス毒素注射による重大な副作用はなかった.
      手首や手指の筋肉への A 型ボツリヌス毒素の注射による治療は,短期間では安全で有効なようであり,脳卒中後上肢痙縮の患者における身体障害を緩和し,QOL を改善する.

      • CFTR 突然変異が存在しない変異型嚢胞性線維症表現型
        Variant Cystic Fibrosis Phenotypes in the Absence of CFTR Mutations

        古典型嚢胞性線維症は,嚢胞性線維症膜通過伝導制御(CFTR)遺伝子の機能喪失突然変異により引き起される常染色体性劣性疾患である.古典型嚢胞性線維症に生じる臨床症状に似た,気道,膵臓,男性生殖管および汗腺における症状は,CFTR 蛋白の機能を除去しないが,減弱させる突然変異をもつ患者にみられている.この研究には,同定可能な CFTR 突然変異をもたず,いくつか嚢胞性線維症の特徴をもつが,古典型嚢胞性線維症の臨床定義を満たさない患者 30 例を組み入れた.この変異型表現型は,CFTR 遺伝子の突然変異以外の因子に由来すると著者らは結論付けている.
        再現性があれば,この知見は,嚢胞性線維症の多くの様相を有する症候群が CFTR 以外の遺伝子の突然変異から生じる可能性があることを示唆している.

        • 侵襲性アスペルギルス症に対するボリコナゾール
          Voriconazole for Invasive Aspergillosis

          侵襲性アスペルギルス症に対するボリコナゾール

          侵襲性アスペルギルス症は,遷延性好中球減少症患者や移植レシピエントにおける重大な感染性合併症であり,何十年にわたり,アムホテリシンが標準療法であった.患者 391 例を組み入れたこの無作為非盲検試験では,侵襲性アスペルギルス症の初期治療としてボリコナゾールとアムホテリシンを比較した.ボリコナゾール治療群では,12 週で有意に優れた奏効率を示し,生存率も改善された(70.8% 対 57.9%,P=0.02).
          ボリコナゾールは,侵襲性アスペルギルス症の治療における重要な進歩を意味する.この無作為試験では,広いスペクトルをもつトリアゾールであるボリコナゾールによる治療が生存率の改善につながり,また,アムホテリシンよりも耐容性に優れ,重症な有害反応も少なかった.

          • 医学の進歩:炎症性腸疾患
            Medical Progress: Inflammatory Bowel Disease

            医学の進歩:炎症性腸疾患

            臨床上の経験は,クローン病と潰瘍性大腸炎が,無関係ではないにしても,別個の疾患であることを示唆している.しかし,これらの病態が根本的に異なっているのか,あるいは発生機序の上で連続した病態の一部であるのかは,疾患管理の概念と実際の双方に影響する疑問である.この総説では,炎症性腸疾患の主な病状の根底にある機序に関する現在の理解についてまとめ,治療へのアプローチについて考察する.
            炎症性腸疾患は,正常な腸管内微生物叢の存在により働く粘膜免疫系の不適切で継続的な活性化の結果起る.この異常な反応は,腸上皮のバリア機能と粘膜免疫系両方の欠陥により促進されると考えられる.