The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み
  • 目 次
  • This Week at NEJM.org

    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

August 22, 2002
Vol. 347 No. 8

  • 酪農場の訪問客における大腸菌 O157:H7 感染
    Escherichia coli O157:H7 Infections among Visitors to a Dairy Farm

    酪農場の訪問客における大腸菌 O157:H7 感染

    大腸菌(Escherichia coli)O157:H7 感染の集団発生の感染源は,酪農ふれあい農場であった.患者 51 例(年齢の中央値,4 歳)は,溶血性尿毒症症候群を発症した 8 例を含んでいた.子ウシとの接触が,感染リスクの上昇と関連があった.農場のウシ 216 頭の 13%は,患者からの分離株と同一の大腸菌株を保菌していた.
    この研究は,農場の動物とその環境から幼い訪問客,とくに子ウシをなでた訪問客への E. coli O157:H7 の直接伝播の証拠を提供している.この伝播様式の重要性は,過去に認識されていたよりも大きいかもしれない.農場訪問後は念入りに手を洗うことが,農場を子供にとってより安全にする 1 つの方法である.

  • 最小侵襲冠動脈バイパス術
    Minimally Invasive Coronary-Artery Bypass Surgery

    最小侵襲冠動脈バイパス術

    最小侵襲バイパス術と冠動脈ステント留置は共に,左動脈前下行枝近位部の狭窄の管理における標準的バイパス術の代替治療法である.この無作為試験では,ステント留置のほうが周術期の有害事象は少なく,短期成績は優れていたが,6 ヵ月後の時点では,狭心症からの解放と反復手技の必要性に関して,最小侵襲バイパス術のほうが優れていた.
    最小侵襲バイパス術は,心肺バイパスを必要としないため魅力的であるが,術野が限られるため技術的にはむずかしい.この試験では使用されなかった薬物溶出ステントより優れていることが証明できるかどうかには,さらなる研究が必要であろう.

  • 根治的乳房切除と乳房全摘の比較
    Radical versus Total Mastectomy

    根治的乳房切除と乳房全摘の比較

    根治的乳房切除と乳房全摘の有効性を比較する試験が 1971 年に開始され,乳癌の女性 1,665 例が登録された.10 年間の追跡調査後,根治的乳房切除は,乳房全摘に比べ優れていなかった.現在,25 年間の追跡調査後では,293 例が生存しており,乳癌を発症していない.根治的乳房切除は,乳房全摘をしのぐ利点を示さなかった.
    この先駆的な試験は,乳癌の女性の QOL を非常に改善させた.この試験は,根治的乳房切除の終焉をもたらし,より狭い範囲の手術へと向う傾向を先導して,ついには腫瘍摘除にいたらしめた.1971 年に乳癌のために用いられていた治療法は現在では時代遅れであるが,この歴史的試験は,乳癌の管理法を新しい方向へと向けた.

  • 短報:父親由来のミトコンドリア DNA
    Brief Report: Paternal Mitochondrial DNA

    短報:父親由来のミトコンドリア DNA

    この報告では,生来の運動不耐性である 28 歳の男性について述べている.精査の結果,ミトコンドリア呼吸鎖の酵素複合体 I のサブユニットをコードする ND2 遺伝子における新規の 2 塩基対ミトコンドリア DNA 欠失によるミトコンドリアミオパシーが判明した.患者と患者の近親者に対する研究では,異常なミトコンドリア DNA は,父方由来で,患者の筋肉に存在するミトコンドリア DNA の 90%を占めていたことが明らかとなった.
    この知見は,ミトコンドリア DNA はすべて母方由来であるという仮定に異議を唱えるものである.

  • Special Article:自殺幇助を依頼した患者を扱ったオレゴン州の看護師とソーシャル・ワーカーの体験
    Special Article: Experiences of Oregon Nurses and Social Workers with Patients Who Requested Assistance with Suicide

    オレゴン州では,1997 年の尊厳死法の制定に伴って,医師幇助自殺が合法化された.幇助自殺により死亡した患者 91 人中 71 人がホスピスケアを受けていた.この研究では,致死薬の処方を受けた患者についてのホスピスの看護師とソーシャル・ワーカーに対する調査の結果を報告している.類似の調査に回答した医師と同様に,ホスピスの看護師とソーシャル・ワーカーは,患者が抑うつ状態である,社会的支援が欠如している,あるいは金銭的負担への懸念という理由からではなく,死の環境を管理したい願望があるため幇助自殺を選択した,と報告した.他のホスピス患者やその家族と比較して,致死薬の処方を受けた患者のほうが疼痛,抑うつ,および不安が少なく,患者の家族介護者への負担も少ないようであった.
    オレゴン州におけるホスピスの看護師とソーシャル・ワーカーの報告は,医師幇助自殺の合法化が,抑うつ状態である,あるいは社会的に孤立しているなどのもっとも弱い立場の終末期症状患者による広範な利用には向っていないことを示唆している.

  • 疾患のメカニズム:血栓性微小血管症
    Mechanisms of Disease: Thrombotic Microangiopathies

    疾患のメカニズム:血栓性微小血管症

    この論文では,血栓性微小血管症の理解における重要な進歩について概説している.血栓性血小板減少性紫斑病と溶血性尿毒症性症候群の両方の発生機序が考察されている.
    von Willebrand 因子の異常に大きなマルチマーとそのマルチマーを切断する金属プロテアーゼの役割の発見が,血栓性血小板減少性紫斑病研究の新傾向に火をつけている.志賀毒素の分子作用に関する解析が,溶血性尿毒症性症候群に対するわれわれの理解に光明を投じた.これらの進歩が,血栓性血小板減少性紫斑病や溶血性尿毒症性症候群の治療における重要な進歩につながる可能性が大きい.