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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
April 29, 2004
Vol. 350 No. 18
ORIGINAL ARTICLE
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鼠径ヘルニア修復術におけるメッシュプラグ法と腹腔鏡下法の比較
Open Mesh vs. Laparoscopic Mesh Hernia Repair鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下メッシュ修復法とメッシュプラグ法を比較したこの大規模多施設共同無作為試験では,腹腔鏡下群に無作為に割付けられた男性患者は,メッシュプラグ群に割付けられた男性患者よりも,2 年の時点での再発率および合併症の発生率が高かった.サブグループ解析から,初発ヘルニア(研究対象のヘルニアの大多数)の再発率は,メッシュプラグ法よりも腹腔鏡下法のほうが有意に高いが,再発ヘルニアでは有意差はないことが明らかになった.
これらの結果は,男性の鼠径ヘルニアに対し,腹腔鏡下メッシュ修復法とメッシュプラグ法の選択肢を告げるさいの一助となる. -
びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫における遺伝子発現と生存
Gene Expression and Survival in Diffuse Large-B-Cell Lymphomaびまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の転帰と関連付けられている 36 個の遺伝子の発現が,リンパ腫の生検標本で,リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応により検討された.36 個のうち 6 個の遺伝子群の発現パターンが,生存と有意に相関していた.
この研究は,DNA マイクロアレイによって得られた大量のデータを,少数の遺伝子群に絞り込んでいる.これらの遺伝子の発現は,広く利用されている方法で容易に測定することができる.この結果から,臨床に即座に応用できる可能性が示唆される. -
永続型の新生児糖尿病の遺伝的要因
Genetic Cause of Permanent Neonatal Diabetesこの研究は,永続型の新生児糖尿病患児の一部に,ATP 感受性カリウム(KATP)チャネルのサブユニット, Kir6.2 をコードする遺伝子の活性化変異が認められることを示している.そのような突然変異は,ATP に反応して起る細胞膜の脱分極を減少させ,その結果,膵臓 β 細胞からのインスリンの分泌を減少させると予測される.スルホニル尿素は,ATP とは独立してインスリンの分泌を刺激する物質で,変異 Kir6.2 を有する患児 3 例ではこれに反応してインスリンが分泌されたことから,治療の方策が示唆される.
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HIV-1 感染の初期治療レジメンの比較
A Comparison of Regimens for the Initial Treatment of HIV-1HIV-1 感染の初期治療には,プロテアーゼ阻害薬をあまり使用しないレジメンが用いられることが多い.この二重盲検試験は,ジドブジン+ラミブジン+アバカビルのヌクレオシドアナログ 3 剤に対するウイルス学的反応が,非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬エファビレンツ+ 2 剤または 3 剤のヌクレオシドアナログの併用レジメンよりも劣ることが,中間解析で明らかになったため中止された.
CURRENT CONCEPTS
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線維筋性異形成
Fibromuscular Dysplasia線維筋性異形成は非炎症性の病態であり,血管炎との区別が困難な場合がある.線維筋性異形成は,動脈の中位あるいは遠位に発現し,とくに若年患者では腎血管性高血圧,脳卒中,脳神経麻痺を引き起す可能性がある.治療には,経皮血管形成術の実施がますますふえている.
SOUNDING BOARD
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食品への放射線照射
Food Irradiation米国では毎年,食品媒介疾患によっておよそ 325,000 人が入院し,約 5,000 人が死亡している.食品に放射線を照射することで食品媒介疾患の発生が大幅に減少する可能性があるが,現在のところほとんど実施されていない.この論文では,食品照射の実施がなかなか普及しない理由を検証している.低温殺菌と同様に,照射は食品の安全性を向上させる効果的な方法である.
MECHANISMS OF DISEASE
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HIV はどこに存在しているのか?
Where Does HIV Live?ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に関する細胞レベルの部位と解剖学的部位を概説したこの論文では,ウイルスの細胞への接着の機序,ウイルスが細胞内に侵入することを介する細胞受容体,そして抗レトロウイルス療法にもかかわらず生き残る HIV に必須とされる,HIV の貯蔵部位について述べている.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
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進行性の神経脱落症状を呈する男性
A Man with Progressive Neurologic Deficits66 歳の男性が,2 ヵ月間にわたる進行性の左半側の脱力を呈した.男性は腎移植を受けており,アルコール性肝硬変,糖尿病,冠動脈疾患を有していた.磁気共鳴画像診断では,T2 強調画像で左前頭葉白質に高信号病変が認められ,この病変は徐々に拡大した.右前頭野および脳幹に新たな病変が出現し,診断のための検査が行われた.
CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH
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骨粗鬆症治療の新たな標的
New Target for Osteoporosis Therapy最近の研究で,マウスの 12/15-リポキシゲナーゼ遺伝子は骨量の変化に関与していることが示され,また,その産物である蛋白質を抑制すると,骨密度や骨強度が増加することが示されている.