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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 27, 2004
Vol. 350 No. 22

ORIGINAL ARTICLE

  • PSA 値が 4.0 ng/mL 以下の男性における前立腺癌の有病率
    Prevalence of Prostate Cancer among Men with a PSA Level <4.0 ng per Milliliter

    PSA 値が 4.0 ng/mL 以下の男性における前立腺癌の有病率

    前立腺癌予防試験において,プラセボ投与を受け,7 年間の試験期間中に前立腺特異抗原(PSA)値が 4.0 ng/mL を超えたことのない約 3,000 例の男性を対象に,試験終了時に前立腺生検を行った.449 例(15%)に前立腺癌が確認され,そのうち 67 例の癌は悪性度が高かった.
    今回の試験では,PSA 値が 4.0 ng/mL 以下でも前立腺癌の存在は除外できず,悪性度の高い癌も含まれることが判明した.この知見は,前立腺癌に対する PSA スクリーニングの実施に関する議論を激化させるであろう.

  • 蘇生時に行う輸液療法における アルブミンと生理食塩水の比較
    Albumin versus Saline for Fluid Resuscitation

    アルブミンと生理食塩水は共に,重症患者の蘇生時に行う輸液療法で広く用いられているが,一方の輸液が他方よりも優れているかどうかは明らかにされていない.集中治療室の重症患者に関するこの臨床試験では,アルブミンと生理食塩水のどちらを用いても,28 日の時点での転帰は同様であった.
    両治療法は臨床転帰に関して同等であるため,使用する輸液の決定は,医師の好み,安全性,費用によって決定すべきである.

  • 肺塞栓症後の慢性肺高血圧症
    Chronic Pulmonary Hypertension after Pulmonary Embolism

    肺塞栓症後の慢性肺高血圧症

    慢性血栓塞栓性肺高血圧症が急性肺塞栓症発症後に生じることは,まれであると考えられる.この研究では,この重篤な合併症の発生率は約 4%と,これまでに報告されていた割合よりもかなり高く,肺塞栓の既往,大きな灌流欠損,受診時の特発性肺塞栓症と関連することが示された.予防するうえで可能性のある方法が論じられている.

  • 黒人および非ヒスパニック系白人における慢性 C 型肝炎の治療
    Treatment of Chronic Hepatitis C in Blacks and Non-Hispanic Whites

    慢性 C 型肝炎の黒人患者は,遺伝子型が 1 型のウイルスに感染している割合が高く,治療に対する反応率が低い.慢性 C 型肝炎の黒人患者 100 例と非ヒスパニック系白人患者 100 例(両群とも 98%が 1 型に感染)を対象としたこの前向き研究では,黒人患者は PEG インターフェロン α-2b とリバビリンの併用療法に対する反応率が低かった(19% 対 52%,P<0.001).
    慢性 C 型肝炎の黒人患者における反応率の低さは,ウイルスの遺伝子型の違いでは説明されない.

CURRENT CONCEPTS

  • 糖尿病における低血糖に関連した自律神経障害
    Hypoglycemia-Associated Autonomic Failure in Diabetes

    この総説は,糖尿病患者でみられる低血糖時の血糖調節障害と,無自覚性低血糖に関する最近の理解について説明している.大半の 1 型糖尿病患者と進行性の 2 型糖尿病患者の多くでは,低血糖に対する生理的防御機構――グルカゴンおよびエピネフリンに対する反応――に障害がある.低血糖に加え,運動と睡眠は認識されるべき自律神経障害の原因であり,糖尿病管理の変化が求められる.

CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL

  • 最近足関節を骨折した女性
    A Woman Who Had Recently Fractured Her Ankle

    最近足関節を骨折した女性が胸痛を訴え,その後自宅で倒れた.女性は脈拍を触知できなかったが,蘇生し病院へ搬送された.さらに無脈性電気活動のエピソードが生じた.心電図では,心拍数は 56 で,房室解離と右脚ブロックが認められた.ベッドサイドで測定した心電図では心膜タンポナーデは認められなかった.積極的に蘇生を行ったにもかかわらず,血圧と酸素飽和度は低いままであった.治療処置が行われた.

LEGAL ISSUES IN MEDICINE

  • 訴訟能力をもたせるための強制投薬
    Forcible Medication for Courtroom Competence

    著者は,元歯科医 Charles Sell の訴訟事件において,2003 年の米国最高裁判決で生じた法的・倫理的問題について論じている.この訴訟事件では,被告が裁判を受ける能力を保つ目的で向精神薬を強制投薬したことの適法性が焦点となっていた.最高裁は,一定の要件を満たした場合には,訴訟能力を回復するための強制投薬を裁判官が命じることができるとしたが,Sell に対する強制治療は,これらの要件を満たしていなかったとして容認しなかった.

CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH

  • 標的遺伝子治療
    Targeting Gene Therapy

    骨の間葉系幹細胞のコラーゲン遺伝子を標的とした治療により,変異コラーゲンの合成が抑制される可能性があるため,このような方法は今後,骨形成不全症のような疾患に対する治療戦略となりうる.