February 27, 1997 Vol. 336 No. 9
新生児の酸化窒素吸入と持続性肺高血圧症
INHALED NITRIC OXIDE AND PERSISTENT PULMONARY HYPERTENSION OF THE NEWBORN
J.D. ROBERTS, JR., AND OTHERS
新生児の持続性肺高血圧症では,肺動脈血管抵抗の増加および非酸素化血液の右から左へのシャントのため,全身動脈に低酸素血症が起る.酸化窒素吸入により,新生児の肺動脈血管抵抗は減少する.われわれは,酸化窒素吸入が,持続性肺高血圧症乳児の重度低酸素血症を減少させるか否かを調べた.
プロスペクティブ多施設試験において,重度低酸素血症と持続性の肺高血圧症を示す満期出産乳児 58 人を無作為割付けして,対照ガス(窒素)または酸化窒素(80 ppm)のいずれかを,人工呼吸器からの酸素と混合して吸入させた.酸素飽和度が 20 分後に増加して,なおかつ全身血圧が低下しなければ,治療成功とみなし,低濃度吸入を持続した.そうでなければ,この治療を中止して,膜型人工肺を含む別の治療を用いた.
酸化窒素吸入により,乳児 30 人中 16 人(53%)で治療が成功し,全身酸素飽和が倍増したが,酸化窒素吸入を行わない従来の治療では,酸素飽和が倍増したのは 28 人中 2 人(7%)のみであった.酸化窒素吸入による長期療法により,初回改善を示した乳児の 75%に全身酸素飽和が持続した.膜型人工肺を必要としたのは,対照群では 71%,酸化窒素群では 40%であった(p = 0.02).死亡数は 2 群で同程度であった.酸化窒素吸入により,全身性低血圧症は起らず,メトヘモグロビン濃度も増加しなかった.
酸化窒素吸入により,持続性肺高血圧症乳児の全身性酸素飽和が改善し,より侵襲的な治療を必要とする回数が減少すると思われる.