The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 25, 1999 Vol. 340 No. 8

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

左室機能障害の転帰における人種差
RACIAL DIFFERENCES IN THE OUTCOME OF LEFT VENTRICULAR DYSFUNCTION

D.L. DRIES AND OTHERS

背景

母集団に基づいた試験から,うっ血性心不全の黒人患者は同じ病態の白人患者よりも死亡率が高いことが明らかにされている.この試験結果は,心不全の重症度,病因および管理,合併症の有病率,および社会経済学的因子の相違によるものであった.黒人のうっ血性心不全による高死亡率は,これらの因子によって,おそらくある程度は説明できるものと考えられるが,われわれは,左室機能障害の自然経過における人種差も,その一端を担っている可能性があるという仮説をたてた.

方 法

左室機能障害研究(Studies of Left Ventricular Dysfunction:SOLVD)の予防試験と治療試験のデータを用いて,黒人と白人の試験参加者における無症候性および症候性の左室収縮期障害の転帰について後ろ向きに解析を行った.これらの試験では,すべての患者に対して標準療法の治療と追跡調査が行われた.黒人および白人の試験参加者の平均追跡調査期間(±SD)は,予防試験が 34.2±14.0 ヵ月,治療試験が 32.3±14.8 ヵ月であった.

結 果

予防試験の全死亡率は,黒人が 100 人年あたり 8.1%,白人が 100 人年あたり 5.1%であった.治療試験の全死亡率は,それぞれ 100 人年あたり 16.7%,100 人年あたり 13.4%であった.年齢,合併症,心不全の重症度と病因,薬物療法の施行で補正すると,全死因死亡のリスクは,SOLVD の予防試験では黒人のほうが高く(相対リスク,1.36;95%信頼区間,1.06~1.74;p=0.02),治療試験でも黒人のほうが高かった(相対リスク,1.25;95%信頼区間,1.04~1.50;p=0.02).左室収縮期障害の進行を示す指標として,ポンプ失調死と,全死因死亡または心不全による入院の複合の 2 つを事前に規定したが,これらのリスクも両試験とも黒人のほうが高かった.

結 論

軽度から中等度の左室収縮期障害を有する黒人は,同様の治療を受けた白人よりも,心不全の進行と全死亡のリスクが高いようである.今回の解析結果は,無症候性および症候性の左室収縮期障害の転帰に人種差があるかもしれないという可能性を示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 609 - 16. )