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March 18, 1999 Vol. 340 No. 11

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エチレングリコール中毒の治療におけるホメピゾール
Fomepizole for the Treatment of Ethylene Glycol Poisoning

J. BRENT AND OTHERS

背景

エチレングリコール中毒は,代謝性アシドーシスと腎不全を引き起して死亡の原因になることがある.これの標準的な治療は,エタノールの中毒量を投与することによるアルコール脱水素酵素の阻害と,補助的な血液透析である.そこで,われわれは,エチレングリコール中毒の治療において,新規のアルコール脱水酵素阻害薬であるホメピゾールの有効性についての試験を実施した.

方 法

エチレングリコール中毒(血漿中のエチレングリコール濃度,≧20 mg/dL [3.2 mmol/L])の 19 例の患者に,ホメピゾールの静脈内投与を行った.特別に規定した基準に合致した患者には血液透析も行った.この試験治療は,血漿中のエチレングリコール濃度が 20 mg/dL 未満になるまで継続した.酸塩基平衡の状態,腎機能,ホメピゾールの薬物動態,およびエチレングリコールの代謝を,あらかじめ設定しておいた間隔で評価した.

結 果

15 例の患者は,試験開始時にすでにアシドーシスが現れていた(平均の血清中の炭酸水素イオン濃度,12.9 mmol/L).酸塩基平衡の状態は,ホメピゾール治療の開始後数時間以内に正常化する傾向が認められた.極度のアシドーシスに陥った 1 例の患者が死亡した.9 例の患者は治療中に腎機能が低下した;この 9 例すべての患者は,試験への登録時に,血清クレアチニン濃度が高く,血漿中のグリコレート濃度も著しく上昇していた(≧97.7 mg/dL [12.9 mmol/L]).登録時に血清クレアチニン濃度が正常であった 10 例の患者には,治療中に腎損傷が認められた患者は 1 例もいなかった;この 10 例のすべての患者は,血漿中グリコレート濃度が 76.8 mg/dL(10.1 mmol/L)以下であった.腎損傷は,試験開始時の血漿中エチレングリコール濃度とは無関係であった.グリコレートの血漿中濃度と,エチレングリコールの主代謝産物であるシュウ酸塩の尿中排泄は,ホメピゾール治療の開始後一定の割合で低下していった.ホメピゾールに起因した有害事象はほとんど認められなかった.

結 論

エチレングリコール中毒の患者に対しては,中毒過程の早期にホメピゾールを投与すると,毒性代謝産物の生成が阻害されるので腎損傷を防ぐことができる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 832 - 8. )