December 16, 1999 Vol. 341 No. 25
冠動脈疾患患者における突然死の予防に関する無作為化試験
A Randomized Study of the Prevention of Sudden Death in Patients with Coronary Artery Disease
A.E. BUXTON AND OTHERS
経験的な抗不整脈療法では,冠動脈疾患があって無症状の心室性不整脈のある患者の死亡は減少していない.先行する研究では,電気生理学検査に従って治療方針を決定する抗不整脈療法が,突然死のリスクを低下させる可能性が示唆されている.
電気生理学的に治療方針を決定する抗不整脈療法は,冠動脈疾患があり,左室駆出率が 40%以下で,なおかつ無症状の非持続性心室性頻脈のある患者の突然死リスクを低下させるだろうという仮説を検証するために,無作為比較試験を実施した.プログラム刺激によって持続性心室性頻脈が誘発された患者を,電気生理学検査の結果に従って薬剤または植込み型除細動器による抗不整脈療法を行う,あるいは抗不整脈療法を行わないのいずれかに無作為に割り付けた.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と β遮断薬は,患者が忍容できる場合に投与した.
誘発性の持続性心室頻拍性不整脈が確認できた合計 704 例の患者を,本試験の治療群に無作為に割り付けた.不整脈による心停止または死亡とした主要エンドポイントの 5 年発生率についての Kaplan–Meier 推定値は,電気生理学的に治療方針を決定する治療を受けた患者では 25%,抗不整脈療法をしない群に割り付けられた患者では 32%であった(相対危険度,0.73;95%信頼区間,0.53~0.99).これは,リスクが 27%低下したことを示している.5 年目での全死亡推定値は,それぞれの患者群で 42%および 48%であった(相対危険度,0.80;95%信頼区間,0.64~1.01).不整脈による心停止または死亡のリスクは,除細動器の治療を受けた患者が,除細動器の治療を受けずに退院した患者よりも有意に低かった(相対危険度,0.24;95%信頼区間,0.13~0.45;p < 0.001).しかしながら,電気生理学的に治療方針を決定する治療に割り付けられて抗不整脈薬の治療を受けた患者では,不整脈による心停止または死亡の発生率と全死亡率のどちらにも,抗不整脈療法をしない群に割り付けられた患者と比較して,低下は認められなかった.
電気生理学的な検査に基づいた抗不整脈療法のうち植込み型除細動器による治療では,冠動脈疾患の高リスク患者の突然死リスクが低下するが,抗不整脈薬ではリスクは低下しない.