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July 1, 1999 Vol. 341 No. 1

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慢性 C 型肝炎の肝障害患者における潜在性 B 型肝炎ウイルスの感染
Occult Hepatitis B Virus Infection in Patients with Chronic Hepatitis C Liver Disease

I. CACCIOLA AND OTHERS

背景

B 型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)が検出されない患者での B 型肝炎ウイルス(HBV)への感染は,潜在性感染と呼ばれている.このような感染は,慢性 C 型肝炎による肝障害が現れている患者で確認されているが,その有病率と臨床上の意義はわかっていない.

方 法

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて,C 型肝炎ウイルス(HCV)に関連した肝障害(慢性肝炎 147 例,肝硬変 48 例,軽度の組織学的病変 5 例)が認められる HBsAg 陰性の患者 200 例から採取した肝臓および血清の検体について,HBV DNA を調べた.これらの患者の 100 例には,HBV のコア抗原に対する抗体(抗 HBc)が検出されていた;残りの 100 例は,HBV のすべてのマーカーが陰性であった.83 例の患者にはインターフェロンαの治療が行われていた.さらに,HBsAg と HCV のマーカーの両方が陰性で,肝障害が認められる患者 50 例についても検討を行った.潜在性 HBV 感染であることが確認された患者のうち 6 例については,クローニングあるいは直接塩基配列決定法によってゲノム再配列の可能性の評価も行った.

結 果

HBV の DNA の塩基配列は,慢性 C 型肝炎による肝障害の患者では 200 例中の 66 例(33%)に検出されたが,C 型肝炎とは関連のない肝障害の患者では 50 例中の 7 例に検出されただけであった(14%,p=0.01).この 66 例の患者については,46 例は抗 HBc が陽性であったが,20 例は HBV のすべてのマーカーが陰性であった(p<0.001).肝硬変は,これら 66 例の患者のうち 22 例(33%)に発現していたのに対して,HBV の塩基配列が認められなかった C 型肝炎の患者 134 例では,その 26 例に発現していただけであった(19%,p=0.04).HBV の DNA の塩基配列は,インターフェロンの治療が無効であった患者では 55 例中の 26 例に,またインターフェロンの治療が有効であった患者では 28 例中の 7 例に検出された(p=0.06).塩基配列を決定できた HBV ゲノムには,ウイルス活性と遺伝子発現を妨げることが知られているゲノムの変化は何も認められなかった.

結 論

潜在性 B 型肝炎感染は,慢性 C 型肝炎による肝障害が現れている患者にしばしば起るが,この感染には臨床的な意義があるものと考えられる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 22 - 6. )