September 16, 1999 Vol. 341 No. 12
献血者のスクリーニング施行前に心臓手術を受けた小児における C 型肝炎感染症の罹患率と臨床転帰
Prevalence and Clinical Outcome of Hepatitis C Infection in Children Who Underwent Cardiac Surgery
M. VOGT AND OTHERS
小児における C 型肝炎感染症の有病率と臨床転帰に関するデータはほとんど得られていない.
そこで,われわれは,ドイツで献血者の C 型肝炎スクリーニングが導入された 1991 年以前に,ドイツのミュンヘンで心臓手術を受けた 458 例の小児について検討を行った.初回手術の平均年齢は 2.8 歳であった;心臓手術の以前または以降に輸血を受けた小児は 1 例もおらず,これらの母親にも C 型肝炎ウイルスに対する抗体(抗 HCV 抗体)を保有していた母親は 1 例もいなかった.これらの小児患者を,年齢および性別をマッチさせた対照被験者 458 例と比較した.
抗 HCV 抗体は,心臓手術を受けた 458 例のうちの 67 例(14.6%)で認められたが,対照被験者では 3 例(0.7%)のみで認められた(p<0.001).初回手術から平均経過期間 19.8 年の時点において,抗 HCV 抗体が陽性であった 67 例のうち,37 例(55%)に血液中に HCV RNA が検出された.残りの 30 例では,HCV 感染は消失しており,これは 6 ヵ月間隔で実施した 3 回のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の陰性結果によって立証された.これらの HCV RNA が陽性であった 37 例では,肝酵素が上昇していたのは 1 例のみであった;この患児は重症の右室側のうっ血性心不全であった.また,肝生検を受けた 17 例では,進行性肝障害の組織学的所見が認められたのは 3 例にすぎなかった.この 3 例は他にも危険因子を有しており,2 例にはうっ血性心不全があり,3 例目の患児は B 型肝炎ウイルスにも感染していた.
ドイツで献血者の C 型肝炎スクリーニングが施行される以前に心臓手術を受けた小児は,この感染症にかかるリスクがかなり大きかった.しかしながら,約 20 年後には,これらの患児の多くで C 型肝炎ウイルスが自然消失していた.また,感染が持続していた患児の臨床経過は,成人になってから感染した人々で予想される臨床経過よりも良好のようである.