March 12, 2009 Vol. 360 No. 11
オゾンへの長期曝露と死亡率
Long-Term Ozone Exposure and Mortality
M. Jerrett and Others
対流圏オゾンの増加と健康上の有害な転帰に関連があることを示している研究は多いが,オゾンへの長期曝露が大気汚染関連死亡率に及ぼす影響については明らかにされていない.オゾン曝露が心肺系,とくに呼吸器系の原因による死亡リスクに関与する可能性について検討した.
米国対がん協会の癌予防研究 II(American Cancer Society Cancer Prevention Study II)の研究コホートのデータと,米国 96 ヵ所の大都市統計地域から得た大気汚染データとの相関を検討した.448,850 例について,18 年の追跡期間中における死亡 118,777 件のデータを解析した.1977~2000 年の,4 月 1 日~9 月 30 日の期間について,1 日最大オゾン濃度のデータを入手した.微粒子物質(空気動力学径2.5 μm以下の粒子 [PM2.5])の濃度に関するデータは,1999~2000 年について入手した.オゾン濃度と死亡リスクとの関連は,標準およびマルチレベルの Cox 回帰モデルを用いて評価した.
一汚染物質モデルでは,PM2.5 の濃度上昇とオゾンの濃度上昇のいずれか一方と,心肺系の原因による死亡リスクの上昇に有意な関連がみられた.2 種汚染物質モデルでは,PM2.5 は心血管系の原因による死亡リスクと,オゾンは呼吸器系の原因による死亡リスクと関連を示した.オゾン濃度 10 ppb の上昇に伴う呼吸器系の原因による死亡の相対リスクは,推定で 1.040(95%信頼区間 1.010~1.067)であった.オゾンと呼吸器系の原因による死亡リスクとの関連は,交絡因子による補正や使用した統計モデルの種類による影響を受けなかった.
この大規模研究では,PM2.5 の濃度を考慮した場合に,心血管系の原因による死亡リスクに対するオゾンの影響は認められなかった.しかし,オゾン濃度の上昇に伴い,呼吸器系の原因による死亡リスクは有意に上昇した.