March 26, 2009 Vol. 360 No. 13
重症患者における強化血糖コントロールと標準血糖コントロールの比較
Intensive versus Conventional Glucose Control in Critically Ill Patients
The NICE-SUGAR Study Investigators
重症患者における目標血糖値の最適な範囲は明らかにされていない.
集中治療室(ICU)での治療が 3 日間以上必要と予想される成人患者を,ICU に入室後 24 時間以内に,目標血糖値を 81~108 mg/dL(4.5~6.0 mmol/L)とする強化血糖コントロール群と,目標血糖値を 180 mg/dL(10.0 mmol/L)以下とする標準血糖コントロール群のいずれかに無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,無作為化後 90 日以内のあらゆる原因による死亡とした.
無作為化された 6,104 例のうち,3,054 例を強化血糖コントロール群に,3,050 例を標準血糖コントロール群に割り付けた.90 日目の主要転帰に関するデータは,強化コントロール群 3,010 例,標準コントロール群 3,012 例から入手できた.両群のベースライン特性は同等であった.強化コントロール群の 829 例(27.5%),標準コントロール群の 751 例(24.9%)が死亡した(強化コントロール群のオッズ比 1.14,95%信頼区間 1.02~1.28,P=0.02).手術を受けた例(外科患者)と手術を受けなかった例(内科患者)とで,治療効果に有意差はみられなかった(強化コントロール群における死亡のオッズ比は外科患者 1.31,内科患者 1.07;P=0.10).重度の低血糖(血糖値40 mg/dL [2.2 mmol/L] 以下)は,強化コントロール群の 3,016 例中 206 例(6.8%)と,標準コントロール群の 3,014 例中 15 例(0.5%)で報告された(P<0.001).両群で,ICU 在室日数の中央値(P=0.84),入院日数の中央値(P=0.86),人工呼吸器装着日数(P=0.56),腎代替療法日数(P=0.39)に有意差はみられなかった.
この大規模多国無作為化試験において,成人の ICU 患者に強化血糖コントロールを行うと,死亡率が上昇することが明らかになった.すなわち目標血糖値を 180 mg/dL 以下にしたほうが,81~108 mg/dL にした場合より死亡率が低かった.(ClinicalTrials.gov 番号 NCT00220987)
本論文(10.1056/NEJMoa0810625)は,2009 年 3 月 24 日に NEJM.org で発表された.