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January 22, 2009 Vol. 360 No. 4

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クロピドグレルに対する反応の遺伝的決定因子と心血管イベント
Genetic Determinants of Response to Clopidogrel and Cardiovascular Events

T. Simon and Others

背景

クロピドグレルに対する患者の反応の薬理遺伝学的決定因子は,この薬剤の生体における抗血小板作用のばらつきの原因となっている.これらの決定因子が急性心筋梗塞後の臨床転帰に及ぼす影響は明らかにされていない.

方 法

急性心筋梗塞で受診しフランスの全国登録に登録され,クロピドグレルによる治療を受けていた連続する 2,208 例の患者を登録した.次に,クロピドグレルの吸収を調節する遺伝子(ABCB1),代謝活性化を調節する遺伝子(CYP3A5CYP2C19),生物活性を調節する遺伝子(P2RY12ITGB3)の対立遺伝子多型と,追跡調査 1 年間におけるあらゆる原因による死亡,非致死的脳卒中,心筋梗塞のリスクとの関連を評価した.

結 果

追跡期間中に 225 例が死亡し,94 例で非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中が発生した.CYP3A5P2RY12ITGB3 の特定の一塩基多型(SNP)のいずれにも,有害転帰のリスクとの相関は認められなかった.ABCB1 の変異型対立遺伝子(ヌクレオチド 3435 が TT)を 2 個有する患者では,ABCB1 の野生型遺伝子(ヌクレオチド 3435 が CC)を有する患者に比べて,1 年目の心血管イベント発生率が高かった(15.5% 対 10.7%,補正ハザード比 1.72,95%信頼区間 [CI] 1.20~2.47).CYP2C19 の機能喪失型対立遺伝子(2,3,4,5)のいずれか 2 個を保有する患者では,保有しない患者に比べてイベント発生率が高かった(21.5% 対 13.3%,補正ハザード比 1.98,95% CI 1.10~3.58).入院中に経皮的冠動脈インターベンションを受けた 1,535 例では,CYP2C19 の機能喪失型対立遺伝子を 2 個保有していた患者の心血管イベント発生率は,保有しない患者の 3.58 倍であった(95% CI 1.71~7.51).

結 論

クロピドグレル投与を受けている急性心筋梗塞患者では,CYP2C19 の機能喪失型対立遺伝子を保有する場合,保有しない場合に比べその後の心血管イベント発生率が高かった.この影響は経皮的冠動脈インターベンションを受けた患者でとくに顕著であった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00673036)

本論文(10.1056/NEJMoa0808227)は,2008 年 12 月 22 日に NEJM.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 360 : 363 - 75. )