February 19, 2009 Vol. 360 No. 8
閉塞冠動脈に対する遠隔期侵襲的治療後の QOL
Quality of Life after Late Invasive Therapy for Occluded Arteries
D.B. Mark and Others
冠動脈開存仮説(open-artery hypothesis)は,心筋梗塞発症後の遠隔期に梗塞責任冠動脈を開通させると,臨床転帰が改善するというものである.われわれは,この戦略を用いることと,QOL と経済的転帰にどのような関連があるかを検討した.
心筋梗塞発症後 3~28 日で,梗塞責任冠動脈が完全閉塞し,状態が安定している高リスク患者を対象に,ステント留置を伴う経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う場合と,薬物療法のみを行う場合を比較した.951 例(適格患者の 44%)について,次の 2 つの主要評価項目を含む一連の検査によって QOL を評価した;Duke 活動状態指標(Duke Activity Status Index:DASI,心臓に関連した身体機能を 0~58 の尺度で評価.スコアが高いほど機能が良好であることを示す),36 項目の健康調査票(Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form)の心の健康の下位尺度(Mental Health Inventory 5,精神的健康度を評価).QOL に関する構造化面接を,ベースラインおよび 4 ヵ月,12 ヵ月,24 ヵ月の時点で実施した.米国の患者 469 例のうち 458 例(98%)の治療費を評価し,2 年間の費用対効果を推定した.
4 ヵ月の時点で,薬物療法群は,PCI 群と比べて DASI スコアで 3.4 ポイントの臨床上わずかな減少を示した(P=0.007).1 年目と 2 年目で差はさらに縮小した.精神的健康度に有意差はみられなかった.米国の患者 469 例において,2 年間の累積治療費は PCI 群のほうが約 7,000 ドル高く(P<0.001),質調整生存期間は薬物療法群のほうがわずかに長かった.
PCI は,4 ヵ月の時点では心臓に関連した身体機能にわずかな有益性が認められたが,それ以降は認められなかった.2 年目の時点で,薬物療法の実施は,ルーチンの PCI よりも費用が有意に低く,質調整生存期間がわずかに長いことに関連していた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00004562)