葉酸受容体に対する自己抗体と神経管欠損症の関連の欠如
Lack of Association between Folate-Receptor Autoantibodies and Neural-Tube Defects
A.M. Molloy and Others
先行研究で,神経管欠損症児の妊娠歴のある女性の 75%で,血清検体中葉酸受容体に対する自己抗体が認められたのに対して,対照群で認められたのは 10%であったことが報告されている.アイルランドでは神経管欠損症の有病率が高いことから,この所見をアイルランド人集団で確認することを試みた.
2 つの研究を実施した.研究 1 では,1993~94 年に採取し凍結保存した血液検体を分析した.検体は,神経管欠損症児の妊娠歴のある母親 103 例(症例),妊娠歴はあるが神経管欠損症児ではなかった母親 103 例(妊娠回数と検体採取日でマッチさせた対照),妊娠歴のない女性 58 例,男性 36 例であった.研究 2 は,血液検体の保存が葉酸受容体に対する自己抗体に影響を及ぼしていないことを確認する目的で実施し,症例 37 例,対照 22 例,妊娠歴のない女性 10 例,男性 9 例から新鮮な血液検体を採取し検討した.すべての検体について,葉酸受容体を遮断する自己抗体・結合する自己抗体について分析した.
研究 1 では,葉酸受容体を遮断する自己抗体は,症例群の 17%で認められたのに対し,対照群では 13%で認められた(オッズ比 1.54,95%信頼区間 [CI] 0.70~3.39).また,葉酸受容体と結合する自己抗体は,症例群 29%,対照群 32%で認められた(オッズ比 0.82,95% CI 0.44~1.50).研究 2 でも同様の結果が得られ,血液検体の劣化の可能性は低いことが示された.
今回調査したアイルランド人集団では,母体における葉酸受容体に対する自己抗体の存在およびその抗体価と,神経管欠損症児妊娠には有意な関連は認められなかった.