December 3, 2009 Vol. 361 No. 23
米国における肥満と喫煙が平均余命に及ぼす影響を予測する
Forecasting the Effects of Obesity and Smoking on U.S. Life Expectancy
S.T. Stewart, D.M. Cutler, and A.B. Rosen
この 30 年で肥満が増加し,米国人の健康に有害な影響を及ぼしているが,一方,喫煙の減少によって改善されている面もある.これら 2 つの傾向が寿命と QOL に複合的に及ぼす影響をさらに理解することで,医療資源のより有効な投入先決定がなされると考えられる.
喫煙と体格指数(BMI)にはこれまでの傾向が続くと仮定したうえで,2005~20 年の各年について,代表とした 18 歳集団における平均余命と質調整余命を予測した.喫煙の傾向は,1978~79 年,1990~91 年,1999~2001 年,2004~06 年の全米健康聞取り調査(National Health Interview Survey)のデータ,BMI の傾向は,1971~75 年,1988~94 年,1999~2002 年,2003~06 年の全米健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)のデータをもとに予測した.喫煙と BMI が健康関連 QOL に及ぼす影響の検討には,2003 年の医療費委員会調査(2003 Medical Expenditure Panel Survey)を使用した.
複数の条件下で,BMI の増加による負の影響は,喫煙の減少による正の影響を上回った.基本的ケースでは,代表とした 18 歳集団の平均余命は 2005~20 年のあいだに 0.71 年短縮し,質調整余命は 0.91 年短縮した.2020 年までにすべての米国成人が標準体重の非喫煙者になった場合,18 歳集団の平均余命は 3.76 年,質調整余命は 5.16 年延長すると予測される.
今後,この肥満傾向を止められなければ,肥満が米国民の健康に及ぼす負の影響は喫煙の減少による正の影響を上回るようになる.肥満の増加に対処しなければ,20 世紀初頭からみられる健康状態の一貫した改善パターンが崩れる可能性がある.