September 6, 2018 Vol. 379 No. 10
CT 冠動脈造影と心筋梗塞の 5 年リスク
Coronary CT Angiography and 5-Year Risk of Myocardial Infarction
The SCOT-HEART Investigators
安定胸痛を有する患者の評価では,CT 冠動脈造影(CTA)によって診断の確実性が増すが,5 年後の臨床転帰に及ぼす影響は不明である.
非盲検多施設共同並行群間試験において,安定胸痛を有し,評価のために循環器診療施設に紹介された患者 4,146 例を,標準治療に加えて CTA を行う群(2,073 例)と,標準治療のみを行う群(2,073 例)に無作為に割り付けた.3~7 年の追跡期間における検査,治療,臨床転帰を評価した.主要評価項目は,5 年の時点での冠動脈疾患による死亡または非致死的心筋梗塞とした.
追跡期間中央値は 4.8 年であり,20,254 患者年追跡した.主要評価項目の 5 年発生率は,CTA 群のほうが標準治療群よりも低かった(2.3% [48 例] 対 3.9% [81 例],ハザード比 0.59,95%信頼区間 [CI] 0.41~0.84,P=0.004).侵襲的冠動脈造影および冠血行再建の施行率は,追跡開始後最初の数ヵ月間は CTA 群のほうが標準治療群よりも高かったが,5 年の時点では全体の施行率は同程度となり,侵襲的冠動脈造影は CTA 群 491 例と標準治療群 502 例(ハザード比 1.00,95% CI 0.88~1.13),冠血行再建は CTA 群 279 例と標準治療群 267 例(ハザード比 1.07,95% CI 0.91~1.27)に施行された.しかし,CTA 群のほうが予防療法を開始した患者が多く(オッズ比 1.40,95% CI 1.19~1.65),抗狭心症療法についても多かった(オッズ比 1.27,95% CI 1.05~1.54).心血管系の原因による死亡,心血管系以外の原因による死亡,全死因死亡の発生率に群間で有意差は認められなかった.
この試験では,安定胸痛を有する患者に対する標準治療に CTA を追加した場合,標準治療のみを行った場合と比較して,5 年の時点での冠動脈疾患による死亡や非致死的心筋梗塞の発生率が有意に低下し,冠動脈造影や冠血行再建の施行率に有意な上昇はみられなかった.(スコットランド政府 Chief Scientist Office ほかから研究助成を受けた.SCOT-HEART 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01149590)