April 11, 2019 Vol. 380 No. 15
ST 上昇を伴わない心停止後の冠動脈造影
Coronary Angiography after Cardiac Arrest without ST-Segment Elevation
J.S. Lemkes and Others
虚血性心疾患は院外心停止の主な原因である.ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)の所見のない心停止後蘇生に成功した患者の治療における,即時的な冠動脈造影と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の役割は依然として明らかにされていない.
多施設共同試験において,STEMI の所見のない心停止を起こした患者 552 例を,冠動脈造影を即時に行う群と,神経学的回復を認めるまで待期する群に無作為に割り付けた.適応がある患者全例に PCI を施行した.主要評価項目は 90 日生存とした.副次的評価項目は,脳機能が良好な状態または軽度~中等度の障害を伴う状態での 90 日生存,心筋障害,カテコラミン補助期間,ショックの指標,心室性頻拍の再発,人工呼吸管理期間,大出血,急性腎障害の発生,腎代替療法の必要性,目標体温到達時間,集中治療室退室時の神経学的状態などとした.
90 日の時点で,即時造影群 273 例中 176 例(64.5%)と,待期的造影群 265 例中 178 例(67.2%)が生存していた(オッズ比 0.89,95%信頼区間 [CI] 0.62~1.27,P=0.51).目標体温到達時間の中央値は,即時造影群 5.4 時間,待期的造影群 4.7 時間であった(幾何平均比 1.19,95% CI 1.04~1.36).残りの副次的評価項目に群間で有意差は認められなかった.
院外心停止後蘇生に成功した STEMI の所見のない患者では,即時的な造影戦略が,90 日の時点での全生存に関して,待期的な造影戦略よりも良好であることは示されなかった.(オランダ心臓研究所ほかから研究助成を受けた.COACT 試験:Netherlands Trial Register 番号 NTR4973)