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April 11, 2019 Vol. 380 No. 15

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前駆期アルツハイマー病に対するベルベセスタットの無作為化試験
Randomized Trial of Verubecestat for Prodromal Alzheimer’s Disease

M.F. Egan and Others

背景

前駆期アルツハイマー病は,認知症発症前に脳内でのアミロイド沈着を修飾する薬剤の効果を検討する機会を提供する.ベルベセスタット(verubecestat)は,アミロイドβ(Aβ)の産生を阻害する経口のβ部位アミロイド前駆体蛋白切断酵素 1(BACE-1)阻害薬である.アルツハイマー病による軽度~中等度の認知症患者を対象とする試験で,臨床的進行は抑制されなかった.

方 法

記憶障害があり,脳アミロイド値が上昇しているが,認知症の症例定義は満たさない患者を対象に,ベルベセスタット 12 mg/日および 40 mg/日をプラセボと比較評価する,104 週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.主要転帰は,臨床認知症評価尺度(CDR-SB)スコア(0~18 のスコアで,高いほど認知機能と日常生活機能が不良であることを示す)のベースラインから 104 週までの変化量とした.副次的転帰は,その他の認知機能と日常生活機能の評価などとした.

結 果

1,454 例が登録された時点で,試験は無益性のため中止された.割付けの内訳はベルベセスタット 12 mg/日の投与を受ける群(12 mg 群)485 例,40 mg/日の投与を受ける群(40 mg 群)484 例,プラセボの投与を受ける群 485 例であった.それぞれ 234 例,231 例,239 例が 104 週間の試験レジメンを完了した.CDR-SB スコアのベースラインから 104 週までの変化量の平均は,12 mg 群が 1.65,40 mg 群が 2.02,プラセボ群が 1.58 と推定され(12 mg 群とプラセボ群との比較の P=0.67,40 mg 群とプラセボ群との比較の P=0.01),高用量群の転帰はプラセボ群よりも不良であることが示唆された.アルツハイマー病による認知症への進行割合は,12 mg 群が 100 患者年あたり 24.5,40 mg 群が 25.5,プラセボ群が 19.3 と推定され(40 mg 群のプラセボ群に対するハザード比 1.38,97.51%信頼区間 1.07~1.79,多重比較の補正なし),プラセボ群のほうが良好であった.有害事象の頻度はベルベセスタット群のほうがプラセボ群よりも高かった.

結 論

前駆期アルツハイマー病患者において,ベルベセスタットにより認知症の臨床的評価は改善されず,一部の指標では,ベルベセスタットの投与を受けた患者のほうがプラセボの投与を受けた患者よりも認知機能と日常生活機能が不良であることが示唆された.(メルク シャープ&ドーム社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01953601)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 1408 - 20. )