The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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日本語アブストラクト

April 11, 2019 Vol. 380 No. 15

ヒルシュスプルング病の分子遺伝学的分析とリスクプロファイル
Molecular Genetic Anatomy and Risk Profile of Hirschsprung’s Disease

J.M. Tilghman and Others

背景

ヒルシュスプルング病,別名先天性腸管無神経節症は腸神経系の発生における障害であり,新生児と乳児の腸閉塞の原因としてもっとも多い.その遺伝率は 80%を超えており,腸神経系に関連する遺伝子のまれな配列変異や頻度の高い配列変異との有意な関連や,単一遺伝子性,染色体性の症候群との有意な関連が含まれる.

方 法

ヒルシュスプルング病患者における遺伝的負荷を定量化するために,患者 190 例の検体の遺伝子型とエクソーム配列を決定した.発端者の DNA 配列変異,大きなコピー数変異,核型変異は,ヒルシュスプルング病またはもう一つの神経発達障害と有意な関連が認められた場合に病因性があると判断した.新規の遺伝子は,マウスおよびヒト胚の腸,ゼブラフィッシュ胚の機能解析で確認した.

結 果

4 つの非コード領域における 5 つ以上の変異の存在が,ヒルシュスプルング病の広範囲に及ぶリスクを規定していた(患者の 48.4%と対照の 17.1%,オッズ比 4.54,95%信頼区間 [CI] 3.19~6.46).腸の神経堤細胞の発達に関与する 24 個の遺伝子(うち 7 個は新規)のまれなコード領域の変異も頻度が高く(患者の 34.7%と対照の 5.0%),非コード領域の変異よりもはるかに高いリスクを付与していた(オッズ比 10.02,95% CI 6.45~15.58).大きなコピー数変異は,存在する患者は少なかったが(11.4%に対し,対照 0.2%),リスクがもっとも高かった(オッズ比 63.07,95% CI 36.75~108.25).患者の 72.1%で特定可能な遺伝的危険因子を 1 個以上認め,患者の少なくとも 48.4%には受容体チロシンキナーゼをコードする遺伝子(RET)の構造または調節ネットワ-クに欠陥があった.個別の患者に関して,ヒルシュスプルング病のリスクの推定値は生児出生 100,000 件あたり 5.33 例(18,800 件に約 1 例)から生児出生 1,000 件あたり 8.38 例(120 件に約 1 例)の範囲であった.

結 論

この研究の患者では,ヒルシュスプルング病は,腸の神経堤細胞の発達に関わる遺伝子に起こる頻度の高い非コード領域の変異,まれなコード領域の変異,コピー数変異に起因しており,これらは RET に関連する広範囲の遺伝的感受性を悪化させていた.個別の患者に関して,遺伝子型特異的なオッズ比には約 67 倍の差があり,この知見はリスク層別化と遺伝カウンセリングの基盤を提供する.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 1421 - 32. )