脳梗塞発症後 9 時間以内の灌流画像に基づく血栓溶解療法
Thrombolysis Guided by Perfusion Imaging up to 9 Hours after Onset of Stroke
H. Ma and Others
急性期脳梗塞に対する静脈内血栓溶解療法の開始は,通常,発症後 4.5 時間以内に限定される.いくつかの試験から,画像上脳組織の虚血を認めるが梗塞は認めない患者では,治療可能時間を延長できる可能性が示唆されている.
自動解析灌流画像にて脳に低灌流であるが救済可能な領域を認めた脳梗塞患者を対象に,多施設共同無作為化プラセボ対照試験を行った.患者を,アルテプラーゼ静注群とプラセボ群に無作為に割り付け,脳梗塞発症後 4.5~9 時間のあいだ,または脳梗塞の症状を伴って起床した時点(睡眠中央時刻から 9 時間以内の場合)に投与した.主要転帰は,修正 Rankin スケールのスコアが 90 日の時点で 0 または 1 であることとした.スコアの範囲は 0(症状なし)~6(死亡)である.主要転帰のリスク比は,ベースラインの年齢と臨床的重症度で補正した.
計画していた 310 例のうち,225 例が登録された時点で,先行試験の肯定的な結果が発表され均衡が失われたため,試験は中止された.113 例がアルテプラーゼ群に,112 例がプラセボ群に無作為に割り付けられた.主要転帰はアルテプラーゼ群の 40 例(35.4%)とプラセボ群の 33 例(29.5%)に認めた(補正リスク比 1.44,95%信頼区間 [CI] 1.01~2.06,P=0.04).症候性脳出血はアルテプラーゼ群の 7 例(6.2%)とプラセボ群の 1 例(0.9%)に認めた(補正リスク比 7.22,95% CI 0.97~53.5,P=0.05).副次的転帰である修正 Rankin スケールのスコア分布に関する順序尺度の分析で,90 日の時点での機能的改善に群間で有意差は認められなかった.
本試験で対象とした救済可能な脳組織を認める脳梗塞患者では,脳梗塞発症後 4.5~9 時間のあいだ,または脳梗塞の症状を伴って起床した時点でアルテプラーゼを投与した場合に,プラセボを投与した場合と比較して,神経障害がないか軽度の患者の割合が高くなった.アルテプラーゼ群のほうが,プラセボ群よりも症候性脳出血を認めた症例が多かった.(オーストラリア国立保健医療研究審議会ほかから研究助成を受けた.EXTEND 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00887328,NCT01580839)