LIMS1 座位のゲノムミスマッチと同種移植腎拒絶反応
Genomic Mismatch at LIMS1 Locus and Kidney Allograft Rejection
N.J. Steers and Others
腎移植では,ドナー–レシピエント間のゲノム不適合によって,新たな抗原に対する同種感作が生じる可能性がある.われわれは,遺伝子破壊変異体の劣性遺伝が同種移植片拒絶反応の危険因子である可能性があるという仮説を立てた.
同種移植腎拒絶反応の 2 段階の遺伝的関連研究を行った.第 1 段階では,腎移植レシピエントのコホートを対象に,50 の頻度の高い遺伝子に共通する欠失型多型の劣性の関連についてスクリーニングを行った.第 2 段階では,第 1 段階の結果をドナーとレシピエントのペアから成る 3 つの独立したコホートで再現した.遺伝子に共通する欠失がホモ接合のレシピエントが,ホモ接合でないドナーから移植を受けた場合のドナーとレシピエントの遺伝子型の組合せをゲノム衝突と定義した.蛋白質アレイ,酵素免疫測定法,ウエスタンブロット法を用いて同種抗体を同定した.
発見コホートでは,レシピエント 705 例が含まれ,LIMS1 座位において,rs893403 によって表される同種移植片拒絶反応との有意な関連を見出した(リスク遺伝子型の非リスク遺伝子型に対するハザード比 1.84,95%信頼区間 [CI] 1.35~2.50,P=9.8×10-5).この影響は,ゲノム衝突モデル下で,3 つの独立したコホートのドナー–レシピエント計 2,004 組で再現された(ハザード比 1.55,95% CI 1.25~1.93,P=6.5×10-5).統合解析(発見コホート+再現コホート)では,リスク遺伝子型は非リスク遺伝子型よりも拒絶反応のリスクが高かった(ハザード比 1.63,95% CI 1.37~1.95,P=4.7×10-8).われわれは,衝突座位でコードされ,腎に発現する蛋白の LIMS1 に対する特異的抗体反応を同定した.この反応には主に IgG2 サブクラス抗体と IgG3 サブクラス抗体が関与していた.
われわれは,LIMS1 座位が非主要組織適合性抗原をコードしているようであることを見出した.この座位におけるゲノム衝突は,同種移植腎拒絶反応と関連し,また抗 LIMS1 抗体である IgG2,IgG3 の産生と関連していた.(コロンビア大学移植センターほかから研究助成を受けた.)