喀痰中好酸球比率低値の軽症喘息に対するモメタゾンとチオトロピウムとの比較
Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma with a Low Sputum Eosinophil Level
S.C. Lazarus and Others
軽症持続型喘息を有する多くの患者で,喀痰中好酸球比率は 2%未満(好酸球低値)である.このような患者に対する適切な治療法は明らかではない.
42 週間の二重盲検クロスオーバー試験において,12 歳以上の軽症持続型喘息患者 295 例を,モメタゾン(吸入ステロイド)を投与する群,チオトロピウム(長時間作用性抗コリン薬)を投与する群,プラセボを投与する群に割り付けた.患者を,喀痰中好酸球比率(2%未満,2%以上)によって分類した.主要転帰は,喀痰中好酸球比率が低値で,試験薬に事前に規定した反応の差がみられた患者における,プラセボと比較したモメタゾンへの反応,プラセボと比較したチオトロピウムへの反応とした.反応は,治療失敗,喘息コントロール日数,1 秒量から成る段階的複合転帰をもとに判定し,両側 P 値が 0.025 未満の場合に統計学的有意性を示すものとした.副次的転帰は,喀痰中好酸球比率が高値の患者の結果と低値の患者の結果との比較とした.
患者の 73%が好酸球低値であり,うち 59%で試験薬の反応に差がみられた.しかし,モメタゾンまたはチオトロピウムへの反応に,プラセボとの有意差は認められなかった.好酸球低値で治療反応に差がみられた患者のうち,モメタゾンへの反応のほうが良好であったのは 57%(95%信頼区間 [CI] 48~66)であり,プラセボへの反応のほうが良好であったのは 43%(95% CI 34~52)であった(P=0.14).一方,チオトロピウムへの反応のほうが良好であったのは 60%(95% CI 51~68)であったのに対し,プラセボへの反応のほうが良好であったのは 40%(95% CI 32~49)であった(P=0.029).好酸球高値の患者では,モメタゾンへの反応のほうがプラセボへの反応よりも有意に良好であったが(74% 対 26%),チオトロピウムへの反応はプラセボへの反応よりも有意には良好でなかった(57% 対 43%).
軽症持続型喘息患者の大部分は喀痰中好酸球比率が低値であり,モメタゾンまたはチオトロピウムへの反応にプラセボとの有意差は認められなかった.これらのデータは,好酸球低値の患者における臨床診療の方向性を示す,吸入ステロイドと他の治療法との比較を目的とした試験における均衡の存在を示している.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.SIENA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02066298)