The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

October 3, 2019 Vol. 381 No. 14

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

安定冠動脈疾患と糖尿病を有する患者におけるチカグレロル
Ticagrelor in Patients with Stable Coronary Disease and Diabetes

P.G. Steg and Others

背景

安定冠動脈疾患と糖尿病を有する患者は,心筋梗塞や脳卒中の既往がなくとも心血管イベントのリスクが高い.アスピリンにチカグレロルを追加することでこの集団の転帰が改善するかどうかは明らかにされていない.

方 法

無作為化二重盲検試験で,安定冠動脈疾患と 2 型糖尿病を有する 50 歳以上の患者を,チカグレロル+アスピリンの投与を受ける群とプラセボ+アスピリンの投与を受ける群に割り付けた.心筋梗塞または脳卒中の既往がある患者は除外した.主要有効性評価項目は,心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合とした.主要安全性評価項目は,心筋梗塞血栓溶解(TIMI)基準の定義による大出血とした.

結 果

19,220 例が無作為化された.追跡期間の中央値は 39.9 ヵ月であった.治療の恒久的中止の頻度は,チカグレロル群のほうがプラセボ群よりも高かった(34.5% 対 25.4%).虚血性心血管イベント(主要有効性評価項目)の発生率は,チカグレロル群のほうがプラセボ群よりも低かった(7.7% 対 8.5%,ハザード比 0.90,95%信頼区間 [CI] 0.81~0.99,P=0.04).一方,TIMI 基準での大出血の発生率はチカグレロル群のほうが高く(2.2% 対 1.0%,ハザード比 2.32,95% CI 1.82~2.94,P<0.001),頭蓋内出血の発生率についても同様であった(0.7% 対 0.5%,ハザード比 1.71,95% CI 1.18~2.48,P=0.005).致死的出血の発生率に有意差は認められなかった(0.2% 対 0.1%,ハザード比 1.90,95% CI 0.87~4.15,P=0.11).探索的評価項目とした不可逆的な害(全死因死亡,心筋梗塞,脳卒中,致死的出血,頭蓋内出血の複合)の発生率は,チカグレロル群とプラセボ群で同程度であった(10.1% 対 10.8%,ハザード比 0.93,95% CI 0.86~1.02).

結 論

安定冠動脈疾患と糖尿病を有し,心筋梗塞または脳卒中の既往がない患者のうち,チカグレロル+アスピリンの投与を受けた患者は,プラセボ+アスピリンの投与を受けた患者よりも虚血性心血管イベントの発生率が低かったが,大出血の発生率は高かった.( アストラゼネカ社から研究助成を受けた.THEMIS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01991795)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 381 : 1309 - 20. )