October 17, 2019 Vol. 381 No. 16
治療抵抗性の胸やけに対する薬物治療と外科治療とを比較する無作為化試験
Randomized Trial of Medical versus Surgical Treatment for Refractory Heartburn
S.J. Spechler and Others
プロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しても持続する胸やけは,頻度の高い臨床的問題であり,可能性のある原因が複数ある.PPI 抵抗性の胸やけに対する治療は有効性が証明されておらず,逆流を抑制する薬剤(例:バクロフェン)または逆流防止術によって胃食道逆流をコントロールするか,神経修飾薬(例:デシプラミン [desipramine])によって内臓知覚過敏を緩和することに重点をおいている.
PPI 抵抗性の胸やけで退役軍人管理局(VA)の消化器クリニックに紹介された患者にオメプラゾール 20 mg を 1 日 2 回 2 週間投与し,胸やけが持続する患者には内視鏡検査,食道生検,食道内圧検査,食道内多チャンネルインピーダンス・pH モニタリングを行った.逆流に関連する胸やけであることが判明した場合に,患者を外科治療群(腹腔鏡下 Nissen 噴門形成術),実薬投与群(オメプラゾール+バクロフェン,症状に応じてデシプラミンを追加),対照薬投与群(オメプラゾール+プラセボ)に無作為に割り付けた.主要転帰は治療成功とし,1 年の時点での胃食道逆流症(GERD)–健康関連 QOL スコア(0~50 で,スコアが高いほど症状が重いことを示す)が 50%以上低下することと定義した.
366 例(平均年齢 48.5 歳,男性 280 例)を組み入れた.無作為化前の手順により 288 例が除外され,内訳は 2 週間のオメプラゾール試験中に胸やけが改善した 42 例,試験手順を完了しなかった 70 例,その他の理由で除外された 54 例,GERD 以外の食道疾患を有する 23 例,機能性胸やけ(GERD やその他の病理学的に確定可能な疾患,食道運動障害,構造異常以外を原因とする胸やけ)を有する 99 例であった.残りの 78 例が無作為化された.手術による治療成功率(27 例中 18 例,67%)は,実薬投与による治療成功率(25 例中 7 例,28%,P=0.007),対照薬投与による治療成功率(26 例中 3 例,12%,P<0.001)よりも有意に優れていた.実薬投与群と対照薬投与群との差は 16 パーセントポイント(95%信頼区間 -5~38,P=0.17)であった.
PPI 抵抗性の胸やけで VA の消化器クリニックに紹介された患者のうち,全身精査で真に PPI 抵抗性の,逆流に関連する胸やけであることが判明した患者は少数であった.この選択性のきわめて高いサブグループでは,手術が薬物治療に対して優越性を示した.(米国退役軍人省共同研究プログラムから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01265550)