膜性腎症の治療におけるリツキシマブとシクロスポリンとの比較
Rituximab or Cyclosporine in the Treatment of Membranous Nephropathy
F.C. Fervenza and Others
膜性腎症の成因には B 細胞異常が関与している.そのためリツキシマブによる B 細胞除去は,膜性腎症患者の蛋白尿の完全寛解・部分寛解の導入と維持に関して,シクロスポリン治療に対し非劣性である可能性がある.
膜性腎症を有し,5 g/24 時間以上の蛋白尿を認め,定量クレアチニンクリアランス値が 40 mL/分/1.73 m2 体表面積以上で,アンジオテンシン系阻害薬の投与を 3 ヵ月以上受けている患者を,リツキシマブを静脈内投与する群(1 回 1,000 mg を 14 日間の間隔をあけて計 2 回静注,部分奏効の場合は 6 ヵ月後に再投与)とシクロスポリンを経口投与する群(開始用量 3.5 mg/kg 体重/日で 12 ヵ月間)に無作為に割り付けた.患者を 24 ヵ月間追跡した.主要評価項目は,24 ヵ月の時点での蛋白尿の完全寛解または部分寛解の複合とした.臨床検査値と安全性も評価した.
130 例を無作為化した.12 ヵ月の時点で,リツキシマブ群 65 例中 39 例(60%)と,シクロスポリン群 65 例中 34 例(52%)で完全寛解または部分寛解が得られた(リスク差 8 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -9~25,非劣性の P=0.004).24 ヵ月の時点で,リツキシマブ群の 39 例(60%)と,シクロスポリン群の 13 例(20%)が完全寛解または部分寛解を得ていた(リスク差 40 パーセントポイント,95% CI 25~55,非劣性・優越性ともに P<0.001).抗ホスホリパーゼ A2 受容体(PLA2R)抗体が陽性で寛解状態にあった患者では,リツキシマブ群のほうが,シクロスポリン群よりも抗 PLA2R 自己抗体価の低下が速く,その程度も大きく,持続期間が長かった.重篤な有害事象はリツキシマブ群の 11 例(17%)とシクロスポリン群の 20 例(31%)に発現した(P=0.06).
リツキシマブは,12 ヵ月の時点での蛋白尿の完全寛解・部分寛解の導入に関してシクロスポリンに対し非劣性を示し,24 ヵ月の時点までの蛋白尿の寛解維持に関して優越性を示した.(ジェネンテック社,フルクファミリー財団から研究助成を受けた.MENTOR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01180036)