アフリカの重度の貧血を有する小児に対する輸血量
Transfusion Volume for Children with Severe Anemia in Africa
K. Maitland and Others
重度の貧血(ヘモグロビン値<6 g/dL)は,サハラ以南のアフリカにおける小児の入院と死亡の主因である.世界保健機関は,貧血にはヘモグロビン値を問わず全血換算で 20 mL/kg 体重の輸血を推奨している.
非盲検ファクトリアル試験で,ヘモグロビン値 6 g/dL 未満で,重症所見(呼吸困難,意識低下など)を呈する生後 2 ヵ月~12 歳のウガンダ人とマラウイ人の小児を,即時輸血を 20 mL/kg で行う群と 30 mL/kg で行う群に無作為に割り付けた.それ以外の無作為化解析で,即時輸血の実施と非実施との比較,退院後の微量栄養素投与,退院後のトリメトプリム・スルファメトキサゾールの予防投与について検討した.主要評価項目は 28 日死亡率とした.
適格であった 3,196 例(月齢中央値 37 ヵ月,マラリア感染 2,050 例 [64.1%])を,輸血量が 30 mL/kg の群(1,598 例)と 20 mL/kg の群(1,598 例)に割り付け,180 日間追跡した.30 mL/kg 群の 1,592 例(99.6%)と 20 mL/kg 群の 1,596 例(99.9%)で輸血が開始された(無作為化からの中央値で 1.2 時間後).1 例あたりの平均(±SD)総輸血量はそれぞれ 475±385 mL と 353±348 mL で,各群 197 例(12.3%)と 300 例(18.8%)が追加の輸血を受けた.全体で,30 mL/kg 群の 55 例(3.4%)と 20 mL/kg 群の 72 例(4.5%)が,28 日の時点より前に死亡した(ハザード比 0.76,95%信頼区間 [CI] 0.54~1.08,log-rank 検定で P=0.12).この結果は,スクリーニング時の発熱(>37.5℃)の有無によって 28 日死亡率に認められた有意な不均一性(Sidak 補正後の P=0.001)を目立たなくした.発熱を認めなかった 1,943 例(60.8%)では,30 mL/kg 群のほうが 20 mL/kg 群よりも死亡率が低かった(ハザード比 0.43,95% CI 0.27~0.69).発熱を認めた 1,253 例(39.2%)では,30 mL/kg 群のほうが 20 mL/kg 群よりも死亡率が高かった(ハザード比 1.91,95% CI 1.04~3.49).180 日の時点での再入院,重篤な有害事象,ヘモグロビン値の回復に,無作為化した群のあいだで差は示されなかった.
2 つの輸血戦略のあいだで,全体的な死亡率に差はみられなかった.(英国医学研究評議会,英国国際開発省から研究助成を受けた.TRACT 試験:Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN84086586)