September 16, 2021 Vol. 385 No. 12
全国規模の状況下における mRNA Covid-19 ワクチン BNT162b2 の安全性
Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting
N. Barda and Others
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)に対するメッセンジャー RNA(mRNA)ベースのワクチンは,承認前の試験では良好な安全性プロファイルを有することが示されたが,それらの試験には規模や対象者の特性の限界があった.mRNA ワクチン BNT162b2 の安全性について,可能性のあるさまざまな有害事象を評価する必要がある.
イスラエルで,最大規模の医療組織のデータを用いて mRNA ワクチン BNT162b2 の安全性を評価した.可能性のある有害事象それぞれについて,その診断を受けたことのない人を対象として,社会人口統計学的変数と臨床的変数を用いてワクチン接種者と未接種者を個別にマッチさせた.ワクチン接種後 42 日目のリスク比とリスク差を,Kaplan–Meier 推定量を用いて推定した.これらの結果を文脈に位置付ける目的で,SARS-CoV-2 感染者と非感染者をマッチさせて同様の解析を行った.ワクチン接種の解析と SARS-CoV-2 感染の解析では同じ有害事象を検討した.
ワクチン接種の解析では,ワクチン接種群と対照群にそれぞれ平均 884,828 人が含まれた.ワクチン接種は,心筋炎(リスク比 3.24,95%信頼区間 [CI] 1.55~12.44,リスク差 100,000 人あたり 2.7 件,95% CI 1.0~4.6),リンパ節腫脹(リスク比 2.43,95% CI 2.05~2.78,リスク差 100,000 人あたり 78.4 件,95% CI 64.1~89.3),虫垂炎(リスク比 1.40,95% CI 1.02~2.01,リスク差 100,000 人あたり 5.0 件,95% CI 0.3~9.9),帯状疱疹(リスク比 1.43,95% CI 1.20~1.73,リスク差 100,000 人あたり 15.8 件,95% CI 8.2~24.2)のリスクが高いことと強く関連していた.SARS-CoV-2 感染は,心筋炎のリスクが大幅に高いこと(リスク比 18.28,95% CI 3.95~25.12,リスク差 100,000 人あたり 11.0 件,95% CI 5.6~15.8)と関連し,心膜炎,不整脈,深部静脈血栓症,肺塞栓症,心筋梗塞,頭蓋内出血,血小板減少症など,その他の重篤な有害事象のリスクが高いこととも関連した.
全国規模のワクチン集団接種という状況下で行われたこの研究では,BNT162b2 ワクチンは,検討した有害事象の大部分のリスク増加とは関連しなかった.BNT162b2 ワクチンは,心筋炎の過剰リスクと関連した(100,000 人あたり 1~5 件).SARS-CoV-2 感染では,この重篤になりうる有害事象のリスクと,その他多くの重篤な有害事象のリスクが大幅に増加した.(ハーバード大学医学部–クラリット研究所 アイバン&フランチェスカ・バーコウィッツ・ファミリー生活研究所共同プログラムから研究助成を受けた.)