The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 23, 2023 Vol. 388 No. 12

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

治療抵抗性老年期うつ病に対する抗うつ薬の増強と切替えとの比較
Antidepressant Augmentation versus Switch in Treatment-Resistant Geriatric Depression

E.J. Lenze and Others

背景

治療抵抗性うつ病の高齢者において,抗うつ薬を増強,あるいは切り替えることの利益とリスクは広く研究されていない.

方 法

治療抵抗性うつ病の 60 歳以上の成人を対象として,2 段階の非盲検試験を行った.第 1 段階では,投与中の抗うつ薬を,アリピプラゾールで増強する群,ブプロピオン(bupropion)で増強する群,ブプロピオンに切り替える群に,1:1:1 の割合で患者を無作為に割り付けた.第 2 段階では,第 1 段階で利益が得られなかったか不適格であった患者を,リチウムで増強する群とノルトリプチリンに切り替える群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.各段階の期間は約 10 週間であった.主要転帰は心理的幸福度のベースラインからの変化とし,米国国立衛生研究所(NIH)ツールボックスの,ポジティブ感情と生活満足度の下位尺度(母平均は 50 で,数値が高いほど幸福度が高いことを示す)で評価した.副次的転帰はうつ病の寛解とした.

結 果

第 1 段階では,619 例が組み入れられ,211 例がアリピプラゾール増強群,206 例がブプロピオン増強群,202 例がブプロピオン切替え群に割り付けられた.幸福度スコアは,それぞれ 4.83 ポイント,4.33 ポイント,2.04 ポイント改善した.アリピプラゾール増強群とブプロピオン切替え群との差は 2.79 ポイント(95%信頼区間 [CI] 0.56~5.02,P=0.014,事前に規定した P 値の閾値は 0.017)であったが,アリピプラゾール増強群とブプロピオン増強群とのあいだと,ブプロピオン増強群とブプロピオン切替え群とのあいだには有意差は認められなかった.寛解は,アリピプラゾール増強群の 28.9%,ブプロピオン増強群の 28.2%,ブプロピオン切替え群の 19.3%で達成された.転倒の発生率はブプロピオン増強群でもっとも高かった.第 2 段階では,248 例が組み入れられ,127 例がリチウム増強群,121 例がノルトリプチリン切替え群に割り付けられた.幸福度スコアは,それぞれ 3.17 ポイント,2.18 ポイント改善した(差 0.99,95% CI -1.92~3.91).寛解はリチウム増強群の 18.9%とノルトリプチリン切替え群の 21.5%で達成された.転倒の発生率は 2 群で同程度であった.

結 論

治療抵抗性うつ病の高齢者において,投与中の抗うつ薬のアリピプラゾールによる増強は,ブプロピオンへの切替えと比較して,10 週間での幸福度の改善が有意に大きく,寛解率が数値上高いことと関連した.増強やブプロピオンへの切替えが無効であった患者では,リチウムによる増強,あるいはノルトリプチリンへの切替えを行っても,幸福度の変化と寛解達成率は同程度であった.(患者中心アウトカム研究所から研究助成を受けた.OPTIMUM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02960763)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 1067 - 79. )