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March 30, 2023 Vol. 388 No. 13

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慢性回腸囊炎治療に用いるベドリズマブ
Vedolizumab for the Treatment of Chronic Pouchitis

S. Travis and Others

背景

潰瘍性大腸炎に対し,回腸囊肛門吻合術(IPAA)を伴う肛門温存大腸切除術を受ける患者の約半数は,その後回腸囊炎を発症し,発症した患者の 1/5 では回腸囊炎が慢性化すると思われる.

方 法

潰瘍性大腸炎に対する IPAA 後に慢性回腸囊炎を発症した成人患者を対象として,ベドリズマブを評価するための第 4 相二重盲検無作為化試験を行った.患者を,ベドリズマブ 300 mg の静脈内投与を 1 日目,2 週目,6 週目,14 週目,22 週目,30 週目に行う群と,プラセボを投与する群に(1:1 の割合で)割り付けた.全例に,1~4 週目にシプロフロキサシンの投与も行った.主要エンドポイントは,14 週目の時点での,修正回腸囊炎疾患活動性指標(mPDAI)で定義した寛解(mPDAI スコア 4 以下,かつ mPDAI の総スコアがベースラインから 2 ポイント以上減少:スコアの範囲は 0~12 で,数値が高いほど回腸囊炎が重症であることを示す)とした.mPDAI は,臨床症状と内視鏡所見から判断する.その他の有効性エンドポイントは,34 週目の時点での mPDAI で定義した寛解,14 週目と 34 週目の時点での mPDAI で定義した奏効(mPDAI スコアがベースラインから 2 ポイント以上減少),14 週目と 34 週目の時点での PDAI で定義した寛解(PDAI スコア 6 以下,かつベースラインから 3 ポイント以上減少:スコアの範囲は 0~18 で,数値が高いほど回腸囊炎が重症であることを示す)などとした.PDAI は,臨床症状,内視鏡所見,組織所見から判断する.

結 果

無作為化された 102 例のうち,14 週目の時点で mPDAI で定義した寛解を達成していた割合は,ベドリズマブ群で 31%(51 例中 16 例),プラセボ群で 10%(51 例中 5 例)であった(差 21 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] 5~38,P=0.01).ベドリズマブがプラセボよりも優れていることを示す差は,34 週目の時点での mPDAI で定義した寛解(差 17 パーセントポイント,95% CI 0~35),14 週目の時点での mPDAI で定義した奏効(差 30 パーセントポイント,95% CI 8~48)と 34 週目の時点での mPDAI で定義した奏効(差 22 パーセントポイント,95% CI 2~40),14 週目の時点での PDAI で定義した寛解(差 25 パーセントポイント,95% CI 8~41)と 34 週目の時点での PDAI で定義した寛解(差 19 パーセントポイント,95% CI 2~37)についても観察された.重篤な有害事象は,ベドリズマブ群では 51 例中 3 例(6%),プラセボ群では 51 例中 4 例(8%)に発現した.

結 論

潰瘍性大腸炎に対する IPAA 後に慢性回腸囊炎を発症した患者に対するベドリズマブによる治療は,プラセボよりも寛解導入に有効であった.(タケダ社から研究助成を受けた.EARNEST 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02790138,EudraCT 登録番号 2015-003472-78)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 1191 - 200. )