March 30, 2023 Vol. 388 No. 13
Helicobacter pylori,相同組換え遺伝子,胃がん
Helicobacter pylori, Homologous-Recombination Genes, and Gastric Cancer
Y. Usui and Others
Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃がんのよく知られたリスク因子である.しかし,遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントの胃がんリスクへの寄与と,H. pylori 感染と組み合わさった場合の胃がんリスクに対する影響は広く評価されていない.
バイオバンク・ジャパンの胃がん患者群 10,426 人と対照群 38,153 人を対象として,27 個の遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントと胃がんリスクとの関連を評価した.また,愛知県がんセンター病院疫学研究(HERPACC)の胃がん患者群 1,433 人と対照群 5,997 人を対象として,病的バリアントと H. pylori 感染状態の組合せが胃がんリスクに及ぼす影響を評価し,累積リスクを算出した.
9 個の遺伝子(APC,ATM,BRCA1,BRCA2,CDH1,MLH1,MSH2,MSH6,PALB2)の生殖細胞系列病的バリアントが胃がんリスクと関連していた.HERPACC の対象において,胃がんリスクに関して,H. pylori 感染と相同組換え遺伝子の病的バリアントとのあいだに交互作用を認めた(交互作用による相対的過剰リスク 16.01,95%信頼区間 [CI] 2.22~29.81,P=0.02).85 歳の時点で,H. pylori 感染陽性の病的バリアント保持者は,H. pylori 感染陽性の病的バリアント非保持者よりも胃がんの累積リスクが高かった(45.5% [95% CI 20.7~62.6] 対 14.4% [95% CI 12.2~16.6]).
H. pylori 感染は,相同組換え遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントに関連する胃がんリスクを修飾した.(日本医療研究開発機構ほかから研究助成を受けた.)