細菌性性感染症を予防するための曝露後ドキシサイクリン
Postexposure Doxycycline to Prevent Bacterial Sexually Transmitted Infections
A.F. Luetkemeyer and Others
男性間性交渉者(MSM)の性感染症(STI)を減少させるための介入が必要である.
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に対する曝露前予防(PrEP)を行っている人(PrEP コホート),または HIV に感染している人(PLWH コホート)で,過去 1 年間に Neisseria gonorrhoeae(淋病),Chlamydia trachomatis(クラミジア),梅毒のいずれかに感染したことのある MSM およびトランスジェンダー女性を対象とした非盲検無作為化試験を行った.参加者を,コンドームなしの性交後 72 時間以内にドキシサイクリン 200 mg を服用する(ドキシサイクリン曝露後予防)群と,ドキシサイクリンを使用しない標準治療を行う群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.STI の検査は年 4 回実施した.主要エンドポイントは,追跡調査の四半期あたり 1 件以上の STI の発生とした.
参加した 501 例(PrEP コホート 327 例,PLWH コホート 174 例)のうち,67%が白人,7%が黒人,11%がアジア人または太平洋諸島系,30%がヒスパニック系またはラテン系であった.PrEP コホートでは,STI が診断されたのは,ドキシサイクリン群では四半期の受診 570 回中 61 回(10.7%),標準治療群では 257 回中 82 回(31.9%)であり,絶対差は -21.2 パーセントポイント,相対リスクは 0.34(95%信頼区間 [CI] 0.24~0.46,P<0.001)であった.PLWH コホートでは,STI が診断されたのは,ドキシサイクリン群では四半期の受診 305 回中 36 回(11.8%),標準治療群では 128 回中 39 回(30.5%)であり,絶対差は -18.7 パーセントポイント,相対リスクは 0.38(95% CI 0.24~0.60,P<0.001)であった.評価した 3 つの STI の発生率は,いずれもドキシサイクリン群のほうが標準治療群よりも低く,PrEP コホートでは,相対リスクは淋病が 0.45(95% CI 0.32~0.65),クラミジアが 0.12(95% CI 0.05~0.25),梅毒が 0.13(95% CI 0.03~0.59)であり,PLWH コホートでは,それぞれ 0.43(95% CI 0.26~0.71),0.26(95% CI 0.12~0.57),0.23(95% CI 0.04~1.29)であった.ドキシサイクリンが原因と考えられたグレード 3 の有害事象は 5 件あり,ドキシサイクリンが原因と考えられた重篤な有害事象はなかった.淋菌の培養が得られた参加者のうち,テトラサイクリン耐性の淋菌は,ドキシサイクリン群では 13 例中 5 例,標準治療群では 16 例中 2 例に認められた.
淋病,クラミジア,梅毒を合わせた発生率は,ドキシサイクリン曝露後予防のほうが標準治療よりも 2/3 低かった.この結果は,細菌性 STI に最近罹患した MSM に対するドキシサイクリン曝露後予防の実施を支持するものである.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.DoxyPEP 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03980223)