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January 12, 2023 Vol. 388 No. 2

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入院医療の安全性
The Safety of Inpatient Health Care

D.W. Bates and Others

背景

入院中の有害事象が「患者への害」の主要な原因であることは,1991 年の「ハーバード医療研究」で報告されている.この研究が行われてから数十年のあいだに患者安全は大きく変化し,入院中の害について最新の評価が必要とされている.

方 法

後ろ向きコホート研究を行い,2018 年暦年にマサチューセッツ州の 11 病院から入院のサンプルを無作為に抽出し,患者への害の頻度,予防可能性,重症度を評価した.トリガー法(診療録における,有害事象との関連が示されている情報の同定)と診療録レビューにより,有害事象の発現を評価した.訓練を受けた看護師が診療録をレビューし,有害事象が発現した可能性のある入院を同定した.その後医師が判定を行い,有害事象の存在と特徴を確認した.

結 果

無作為抽出した入院 2,809 件のうち,23.6%で 1 件以上の有害事象を同定した.有害事象数は 978 件で,うち 222 件(22.7%)は予防可能と判定され,316 件(32.3%)は重症度が重篤(大きな介入や,回復の遅延という害をもたらしたもの),またはそれ以上であった.予防可能な有害事象は入院全体の 191 件(6.8%)に発現し,重篤またはそれ以上の予防可能な有害事象は 29 件(1.0%)に発現した.死亡は 7 例あり,うち 1 例は予防可能とみなされた.もっとも頻度の高かった有害事象は医薬品有害事象であり(イベント全体の 39.0%),手術・手技関連イベント(30.4%),患者ケアイベント(転倒,褥瘡性潰瘍などの,看護ケアに関連するイベントと定義)(15.0%),医療関連感染(11.9%)と続いた.

結 論

有害事象は入院 4 件に 1 件近くの割合で同定され,その約 1/4 は予防可能であった.これらの知見は,患者安全の重要性と,継続的な改善の必要性を強調するものである.(コントロールドリスクインシュランスカンパニー,ハーバード大学病院リスクマネジメント財団から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 142 - 53. )