特発性 CD4 リンパ球減少症の 30 年での再検討
Reappraisal of Idiopathic CD4 Lymphocytopenia at 30 Years
A. Lisco and Others
特発性 CD4 リンパ球減少症(ICL)は,免疫不全の主因や,後天的原因がない状態で CD4 リンパ球数 300/mm3 未満と定義される臨床症候群である.最初に同定されてから約 30 年が経過したが,依然として原因不明の疾患であり,診断法,治療法の革新にもかかわらず,予後や管理に関するエビデンスは限られている.
11 年の期間中に登録された患者 108 例の臨床的,遺伝学的,免疫学的,予後的特徴を評価した.リンパ球減少症の遺伝学的原因を同定するために,全エクソーム解析と標的遺伝子解析を行った.また,T 細胞数の軌跡について経時的な線形混合モデル解析を行い,臨床イベントの予測因子,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)予防接種に対する反応,死亡率を評価した.
CD4 リンパ球が減少する遺伝学的原因や後天的原因を有する患者を除外すると,研究対象集団は 91 例となり,追跡調査期間は 374 人年であった.CD4 陽性 T 細胞数の中央値は 80/mm3 であった.とくに頻度の高かった日和見感染は,ヒトパピローマウイルス関連疾患(29%),クリプトコッカス症(24%),伝染性軟属腫(9%),非結核性抗酸菌症(5%)であった.CD4 数低値(<100/mm3)は,101~300/mm3 の場合と比較して,日和見感染のリスクが高いこと(オッズ比 5.3,95%信頼区間 [CI] 2.8~10.7),浸潤癌のリスクが高いこと(オッズ比 2.1,95% CI 1.1~4.3),自己免疫のリスクが低いこと(オッズ比 0.5,95% CI 0.2~0.9)と関連していた.死亡リスクは,年齢と性別を補正した一般集団と比較して同程度であったが,癌の有病率は高かった.
今回の研究対象患者においても,ICL は,ウイルスによる感染症,莢膜を有する真菌による感染症,抗酸菌症に対する感受性が高いことと関連し,また,新規抗原に対する反応が低いこと,癌リスクが高いことと関連した.(米国国立アレルギー感染症研究所,米国国立がん研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00867269)