三尖弁閉鎖不全症患者に対する経カテーテル修復術
Transcatheter Repair for Patients with Tricuspid Regurgitation
P. Sorajja and Others
重症三尖弁閉鎖不全症は重い合併症を伴い,QOL 不良と関連することの多い消耗性の疾患である.逆流を減少させることで症状が軽減し,臨床転帰が改善する可能性がある.
重症三尖弁閉鎖不全症に対する経皮的修復術として,三尖弁経カテーテル edge-to-edge 法(TEER)の前向き無作為化試験を行った.米国,カナダ,欧州の 65 施設で,有症状の重症三尖弁閉鎖不全症患者を組み入れ,TEER を行う群と内科的治療を行う群(対照群)に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,全死因死亡または三尖弁手術,心不全による入院,カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)で評価した QOL の改善から成る,階層的複合エンドポイントとした.QOL の改善は,追跡期間 1 年の時点で,KCCQ スコア(0~100 で,数値が高いほど QOL が良好であることを示す)が 15 ポイント以上上昇していることと定義した.三尖弁逆流の重症度と,安全性も評価した.
350 例が組み入れられ,各群に 175 例が割り付けられた.患者の平均年齢は 78 歳で,54.9%が女性であった.主要エンドポイントの結果は,TEER 群のほうが良好であった(win 比 1.48,95%信頼区間 1.06~2.13,P=0.02).死亡または三尖弁手術の発生率,心不全による入院の発生率には,群間で差はなかった.KCCQ QOL スコアは,TEER 群では平均(±SD)12.3±1.8 ポイント変化したのに対し,対照群では 0.6±1.8 ポイントであった(P<0.001).30 日の時点で,三尖弁逆流の重症度が中等度以下に低下していた患者の割合は,TEER 群では 87.0%,対照群では 4.8%であった(P<0.001).TEER は安全であることが示され,この手技を受けた患者の 98.3%には,30 日の時点で重大な有害事象は発現していなかった.
重症三尖弁閉鎖不全症患者に対する三尖弁 TEER は安全であり,三尖弁逆流の重症度を低下させ,QOL の改善と関連した.(アボット社から研究助成を受けた.TRILUMINATE Pivotal 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03904147)