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May 18, 2023 Vol. 388 No. 20

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鞭虫感染と鉤虫感染に対するエモデプシド
Emodepside for Trichuris trichiura and Hookworm Infection

E.C. Mrimi and Others

背景

ヒトの土壌伝播蠕虫感染症に対する現在の治療法は,鞭虫(Trichuris trichiura)に対する有効性が低い. エモデプシド(emodepside)は,動物用の薬剤で,ヒトのオンコセルカ症の治療薬として開発が進められているが,土壌伝播蠕虫感染症治療薬の有力な候補である.

方 法

鞭虫感染と鉤虫感染に対するエモデプシドの有効性と安全性を評価するため,それぞれの感染について,第 2a 相用量範囲探索無作為化比較試験を行った.便検体中に鞭虫卵または鉤虫卵が検出されていた 18~45 歳の成人を,エモデプシドを 5,10,15,20,25,30 mg のいずれかの用量で単回経口投与する群,アルベンダゾール 400 mg を単回経口投与する群,プラセボを投与する群のいずれかに,同数ずつ,無作為に割り付けた.主要転帰は,エモデプシド投与後 14~21 日の時点で鞭虫感染または鉤虫感染が治癒した参加者の割合(治癒割合)とし,Kato–Katz 厚層塗抹法を用いて判定した.安全性は,薬剤またはプラセボの投与後 3 時間,24 時間,48 時間の時点で評価した.

結 果

266 例が鞭虫試験,176 例が鉤虫試験に登録された.エモデプシド 5 mg 群における鞭虫の治癒割合の予測値(85% [95%信頼区間 {CI} 69~93],30 例中 25 例)は,プラセボ群の治癒割合の予測値(10% [95% CI 3~26],31 例中 3 例)よりも高く,アルベンダゾール群の治癒割合の観測値(17% [95% CI 6~35],30 例中 5 例)よりも高かった.鉤虫感染の参加者では用量依存的な関係が認められ,治癒割合の観測値はエモデプシド 5 mg 群で 32%(95% CI 13~57,19 例中 6 例),エモデプシド 30 mg 群で 95%(95% CI 74~99.9,19 例中 18 例)であり,プラセボ群では 14%(95% CI 3~36,21 例中 3 例),アルベンダゾール群では 70%(95% CI 46~88,20 例中 14 例)であった.エモデプシド群で,投与後 3 時間,24 時間の時点で多く報告された有害事象は,頭痛,霧視,浮動性めまいであり,発現率はおおむね用量依存的に増加した.有害事象の大部分は軽度であり,自然治癒した.中等度の有害事象は少なく,重篤な有害事象はなかった.

結 論

エモデプシドは鞭虫感染と鉤虫感染に対して活性を示した.(欧州研究会議から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05017194)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 1863 - 75. )