ホルモン受容体陽性進行乳癌に対するカピバセルチブ
Capivasertib in Hormone Receptor–Positive Advanced Breast Cancer
N.C. Turner and Others
AKT 経路の活性化は,内分泌療法の抵抗性と関連することが示唆されている.ホルモン受容体陽性進行乳癌患者において,AKT 阻害薬カピバセルチブ(capivasertib)を,フルベストラント療法に追加した場合の有効性と安全性に関するデータは限られている.
第 3 相無作為化二重盲検試験で,ホルモン受容体陽性,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性の進行乳癌を有する閉経前,閉経周辺期,閉経後の女性,および男性を適格とし,サイクリン依存性キナーゼ 4 および 6(CDK4/6)阻害薬の併用・非併用を問わず,アロマターゼ阻害薬による治療中または治療後に再発または病勢進行が認められた患者を登録した.患者を,カピバセルチブ+フルベストラントを投与する群と,プラセボ+フルベストラントを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは医師の評価による無増悪生存とし,集団全体と,AKT 経路(PIK3CA,AKT1,PTEN)に変異を有する腫瘍の患者の両方で評価した.安全性も評価した.
全体で 708 例が無作為化され,289 例(40.8%)が AKT 経路に変異を有し,489 例(69.1%)に進行乳癌に対する CDK4/6 阻害薬による治療歴があった.集団全体では,無増悪生存期間の中央値は,カピバセルチブ+フルベストラント群では 7.2 ヵ月であったのに対し,プラセボ+フルベストラント群では 3.6 ヵ月であった(進行または死亡のハザード比 0.60,95%信頼区間 [CI] 0.51~0.71,P<0.001).AKT 経路変異集団では,無増悪生存期間の中央値は,カピバセルチブ+フルベストラント群では 7.3 ヵ月であったのに対し,プラセボ+フルベストラント群では 3.1 ヵ月であった(ハザード比 0.50,95% CI 0.38~0.65,P<0.001).カピバセルチブ+フルベストラントの投与を受けた患者で頻度の高かったグレード 3 以上の有害事象は,発疹(12.1%,これに対しプラセボ+フルベストラントの投与を受けた患者では 0.3%)と,下痢(同 9.3% 対 0.3%)であった.中止にいたった有害事象は,カピバセルチブの投与を受けた患者の 13.0%と,プラセボの投与を受けた患者の 2.3%で報告された.
ホルモン受容体陽性進行乳癌で,CDK4/6 阻害薬併用または非併用下でのアロマターゼ阻害薬による前治療の最中または治療後に病勢が進行した患者において,カピバセルチブ+フルベストラント療法により,フルベストラント単独と比較して無増悪生存期間が有意に延長した.(アストラゼネカ社,米国国立がん研究所から研究助成を受けた.CAPItello-291 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04305496)