慢性硬膜下血腫に対するデキサメタゾンと手術との比較
Dexamethasone versus Surgery for Chronic Subdural Hematoma
I.P. Miah and Others
慢性硬膜下血腫の治療における,血腫除去術を行わないグルココルチコイドの役割は明らかでない.
多施設共同非盲検比較非劣性試験で,症候性慢性硬膜下血腫患者を,デキサメタゾンを 19 日間漸減投与する群と,穿頭ドレナージを行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは無作為化後 3 ヵ月の時点での機能転帰とし,修正ランキンスケールスコア(0 [症状なし]~6 [死亡])で評価した.非劣性は,デキサメタゾン群の機能転帰が,手術群よりも良好であることのオッズ比の 95%信頼区間下限が 0.9 以上であることと定義した.副次的エンドポイントは,慢性硬膜下血腫の症状の重症度に関するマークウォルダー評価尺度(MGS)スコア,拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)スコアなどとした.
2016 年 9 月~2021 年 2 月に,計画されたサンプル数 420 例のところ,252 例が組み入れられ,127 例がデキサメタゾン群,125 例が手術群に割り付けられた.患者の平均年齢は 74 歳であり,77%が男性であった.デキサメタゾン群で安全性と転帰に懸念が生じたため,データ安全性モニタリング委員会により試験は早期に中止された.デキサメタゾン群の 3 ヵ月の時点での修正ランキンスケールスコアが手術群よりも低い(良好である)ことの補正共通オッズ比は 0.55(95%信頼区間 0.34~0.90)であり,デキサメタゾンの非劣性は示されなかった.MGS スコアと GOSE スコアは,おおむね主要解析の結果を支持した.合併症はデキサメタゾン群の患者の 59%と手術群の患者の 32%に発生し,追加手術はそれぞれ 55%と 6%に行われた.
慢性硬膜下血腫患者を対象に行われ,早期に中止された試験で,デキサメタゾンの投与は,穿頭ドレナージと比較して,機能転帰に関して非劣性を示さず,合併症がより多いことと,のちに手術を受ける確率がより高いことと関連した.(オランダ健康研究開発機構ほかから研究助成を受けた.DECSA 試験:EudraCT 登録番号 2015-001563-39)