テロメア延長における家族性クローン性造血
Familial Clonal Hematopoiesis in a Long Telomere Syndrome
E.A. DeBoy and Others
テロメア短縮は,特徴が十分に解明された細胞老化のメカニズムであり,加齢関連疾患を引き起こす.しかし,テロメア長が長いことが有益であるかどうかはほとんどわかっていない.
テロメア関連遺伝子 POT1 のヘテロ接合性機能喪失型変異の保有者と,その変異を保有しない血縁者における加齢と癌について,臨床的特徴と分子的特徴を調査した.
最初のコホートに,POT1 変異保有者 17 例と非保有血縁者 21 例を組み入れ,その後,検証コホートに別の POT1 変異保有者を 6 例組み入れた.テロメア長は,測定された POT1 変異保有者の大部分(13 例中 9 例)で長かった(99 パーセンタイル超).POT1 変異保有者は,B 細胞リンパ腫,T 細胞リンパ腫,骨髄癌のほか,上皮組織,間葉系組織,神経組織に良性から悪性のさまざまな腫瘍を有していた.解析を行った POT1 変異保有者 18 例中 5 例(28%)に T 細胞のクローン性増殖が認められ,12 例中 8 例(67%)に,未確定の潜在能をもつクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)が認められた.クローン性造血の素因は常染色体顕性(優性)遺伝形式で遺伝し,その浸透率は年齢に伴って上昇し,体細胞性の DNMT3A 変異,JAK2 ホットスポット変異の頻度が高かった.これらの変異とその他の体細胞性のドライバー変異は,おそらく生後数十年のあいだに生じ,その細胞系列がその後蓄積してゆくことで,変異量の増加がもたらされた.これは「時計のような」性質といえる.後続の世代は,表現促進現象(すなわち疾患の発症年齢の若年化)を示した.POT1 変異非保有血縁者では,年齢に伴う典型的なテロメア短縮が認められたのとは対照的に,POT1 変異保有者のテロメア長は研究期間の 2 年間維持された.
テロメア延長に関連する POT1 変異は,良性から悪性のさまざまな固形腫瘍を伴う家族性クローン性造血症の素因を付与した.これらの表現型のリスクには,長くなった細胞寿命と,テロメアを経時的に維持する能力が介在した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)