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March 2, 2023 Vol. 388 No. 9

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移植レシピエントの皮膚癌の化学的予防に用いるニコチン酸アミド
Nicotinamide for Skin-Cancer Chemoprevention in Transplant Recipients

N.C. Allen and Others

背景

免疫抑制状態にある臓器移植レシピエントは,皮膚癌発生率と皮膚癌死亡率が高い.ニコチン酸アミド(ビタミン B3)は,紫外線(UV)による DNA 損傷の修復を促進し,UV による皮膚免疫抑制作用を減弱させ,高リスクの免疫正常患者のケラチノサイト癌(有棘細胞癌と基底細胞癌を含む)と日光角化症の発生率を低下させる.臓器移植レシピエントの皮膚癌の化学的予防に,ニコチン酸アミドの経口投与が有効であるかどうかは明らかにされていない.

方 法

第 3 相試験で,過去 5 年間に 2 個以上のケラチノサイト癌が認められた臓器移植レシピエントを,ニコチン酸アミド 500 mg を 1 日 2 回,12 ヵ月間投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.参加者は,皮膚科医による皮膚病変の検査を 3 ヵ月間隔で 12 ヵ月間受けた.主要エンドポイントは,12 ヵ月の介入期間中におけるケラチノサイト癌の新規発生数とした.副次的エンドポイントは,12 ヵ月の介入期間中における有棘細胞癌と基底細胞癌の数,無作為化後 6 ヵ月までの日光角化症の数,安全性,QOL などとした.

結 果

158 例が組み入れられ,79 例がニコチン酸アミド群,79 例がプラセボ群に割り付けられた.登録不良のため,試験は早期に中止された.12 ヵ月の時点で,ケラチノサイト癌の新規発生数は,ニコチン酸アミド群で 207 個,プラセボ群で 210 個であった(発生率比 1.0,95%信頼区間 0.8~1.3,P=0.96).有棘細胞癌と基底細胞癌の数,日光角化症の数,QOL スコアに,群間で有意差は認められなかった.有害事象,および血液・尿の臨床検査値の変化は 2 群で同様であった.

結 論

12 ヵ月間のプラセボ対照試験で,免疫抑制状態にある固形臓器移植レシピエントにニコチン酸アミド経口療法を行っても,ケラチノサイト癌と日光角化症の数は減少しなかった.(オーストラリア国立保健医療研究評議会から研究助成を受けた.ONTRANS 試験:Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12617000599370)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 804 - 12. )