The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

January 5, 2023 Vol. 388 No. 1

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

早期アルツハイマー病に対するレカネマブ
Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease

C.H. van Dyck and Others

背景

可溶性アミロイド β(Aβ)と不溶性 Aβ の凝集体が蓄積することで,アルツハイマー病の病理過程が開始または増強される.レカネマブ(lecanemab)は,可溶性 Aβ プロトフィブリルと高い親和性で結合するヒト化 IgG1 モノクローナル抗体であり,早期アルツハイマー病患者で検討が進められている.

方 法

早期アルツハイマー病(アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症)を有し,陽電子放射断層撮影(PET)または脳脊髄液検査でアミロイドの沈着を認める 50~90 歳の人を対象として,18 ヵ月間の多施設共同二重盲検第 3 相試験を行った.参加者を,レカネマブ(10 mg/kg 体重を 2 週間隔)を静脈内投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,臨床認知症評価尺度(CDR-SB)スコア(0~18 で,数値が高いほど障害が大きいことを示す)のベースラインから 18 ヵ月までの変化量とした.主な副次的エンドポイントは,PET 上のアミロイド蓄積の変化量,アルツハイマー病評価尺度の 14 項目の認知機能下位尺度(ADAS-cog14)スコア(0~90 で,数値が高いほど障害が大きいことを示す),アルツハイマー病複合スコア(ADCOMS;0~1.97 で,数値が高いほど障害が大きいことを示す),アルツハイマー病共同研究の軽度認知障害における日常生活動作評価尺度(ADCS-MCI-ADL)スコア(0~53 で,数値が低いほど障害が大きいことを示す)とした.

結 果

1,795 例が組み入れられ,898 例がレカネマブ,897 例がプラセボの投与を受けた.ベースライン時の CDR-SB スコアの平均は,両群とも約 3.2 であった.ベースラインから 18 ヵ月までの変化量の補正後の最小二乗平均値は,レカネマブ群で 1.21,プラセボ群で 1.66 であった(差 -0.45,95%信頼区間 [CI] -0.67~-0.23,P<0.001).698 例で行ったサブ試験では,脳内アミロイド蓄積量の減少は,レカネマブ群のほうがプラセボ群よりも大きかった(差 -59.1 センチロイド,95% CI -62.6~-55.6).その他の尺度もレカネマブのほうが良好であり,ベースラインからの変化量における群間差の平均は,ADAS-cog14 スコアが -1.44(95% CI -2.27~-0.61,P<0.001),ADCOMS が -0.050(95% CI -0.074~-0.027,P<0.001),ADCS-MCI-ADL スコアが 2.0(95% CI 1.2~2.8,P<0.001)であった.レカネマブを投与した参加者の 26.4%に注入に伴う反応(インフュージョンリアクション),12.6%に浮腫または滲出液貯留を伴うアミロイド関連画像異常が認められた.

結 論

レカネマブの投与は,18 ヵ月の時点で,早期アルツハイマー病におけるアミロイド関連マーカーを減少させ,認知・身体機能尺度の低下がプラセボよりも小さかったが,有害事象とも関連した.早期アルツハイマー病に対するレカネマブの有効性と安全性を明らかにするためには,より長期の試験が必要とされる.(エーザイ社,バイオジェン社から研究助成を受けた.Clarity AD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03887455)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 9 - 21. )