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January 5, 2023 Vol. 388 No. 1

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急性心不全の転帰を改善するための介入の試験
Trial of an Intervention to Improve Acute Heart Failure Outcomes

D.S. Lee and Others

背景

急性心不全患者は高頻度に,あるいは系統的に入院するが,その理由は,有害転帰のリスクが不明であるためと,専門医による経過観察への速やかな移行の選択肢が不足しているためである.患者を退院させるか入院させるか,臨床医の意思決定を支援する戦略を,外来での経過観察への速やかな移行と組み合わせて用いることで,転帰に影響を及ぼすかどうかは明らかにされていない.

方 法

カナダ・オンタリオ州の 10 ヵ所の病院で,段階的(stepped-wedge)クラスター無作為化試験を行い,各病院を,対照期間(通常診療)から介入期間へと一方向に,段階的に切り替えるクラスターに無作為に割り付けた.ポイントオブケアで行えるアルゴリズムを用いて,急性心不全患者を死亡リスクで層別化した.介入期間中,低リスクの患者は早期(3 日以内)に退院し,標準化された外来診療を受け,高リスクの患者は入院した.主要転帰は,受診後 30 日以内の全死因死亡または心血管系の原因による入院の複合と,20 ヵ月以内の複合転帰の 2 つとした.

結 果

5,452 例(対照期間中に 2,972 例,介入期間中に 2,480 例)が組み入れられた.30 日以内の全死因死亡または心血管系の原因による入院は,介入期間中に組み入れられた 301 例(12.1%)と,対照期間中に組み入れられた 430 例(14.5%)に発生した(補正ハザード比 0.88,95%信頼区間 [CI] 0.78~0.99,P=0.04).20 ヵ月以内の主要転帰イベントの累積発生率は,介入期間中に組み入れられた患者で 54.4%(95% CI 48.6~59.9),対照期間中に組み入れられた患者で 56.2%(95% CI 54.2~58.1)であった(補正ハザード比 0.95,95% CI 0.92~0.99).低リスクの患者も中リスクの患者も,初回の外来受診前,かつ退院後 30 日以内に発生した原因を問わない死亡または入院は 6 件未満であった.

結 論

救急診療を求める急性心不全患者において,臨床意思決定を支援する病院ベースの戦略と速やかな経過観察により,30 日以内の全死因死亡または心血管系の原因による入院の複合リスクは,通常診療に比べて低くなった.(オンタリオ州 SPOR サポートユニットほかから研究助成を受けた.COACH 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02674438)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 22 - 32. )