分娩後出血の早期発見と治療の無作為化試験
Randomized Trial of Early Detection and Treatment of Postpartum Hemorrhage
I. Gallos and Others
分娩後出血の発見・治療の遅れは,合併症や死亡につながる可能性がある.血液回収ドレープは,客観的で正確な分娩後出血の早期診断に役立つ可能性があり,複数の治療を「束」として行う「治療バンドル」によって,有効な介入の遅れや一貫性のなさに対処できる可能性がある.
経腟分娩者の分娩後出血に対する多因子臨床介入を評価するために,国際共同クラスター無作為化試験を行った.介入は,分娩後出血の早期発見を目的とした目盛付き血液回収ドレープと,初期対応治療のバンドル(子宮マッサージ,子宮収縮薬,トラネキサム酸,静脈内輸液,診察・高度治療への移行)とし,「実行戦略」でその実行を支援した(介入群).対照群の病院は通常ケアを提供した.主要転帰は,重度の分娩後出血(出血量 1,000 mL 以上),出血に対する開腹手術,出血による母体死亡の複合とした.重要な副次的実行転帰は,分娩後出血の発見と,治療バンドルへのアドヒアランスとした.
ケニア,ナイジェリア,南アフリカ,タンザニアの 80 ヵ所の二次医療機関が,介入群と通常ケア群に無作為に割り付けられた.これらの施設では,試験期間中に 210,132 例が経腟分娩を行った.データが得られた病院と女性では,主要転帰イベントは,介入群では 1.6%に発生したのに対し,通常ケア群では 4.3%に発生した(リスク比 0.40,95%信頼区間 [CI] 0.32~0.50,P<0.001).分娩後出血の発見率は,介入群 93.1%,通常ケア群 51.1%であり(率比 1.58,95% CI 1.41~1.76),治療バンドルのアドヒアランス率はそれぞれ 91.2%,19.4%であった(率比 4.94,95% CI 3.88~6.28).
経腟分娩者では,分娩後出血を早期に発見し,治療バンドルを実施することで,主要転帰とした重度の分娩後出血,出血に対する開腹手術,出血による死亡の複合のリスクが,通常ケアよりも低くなった.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.E-MOTIVE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04341662)