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October 5, 2023 Vol. 389 No. 14

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治療抵抗性うつ病に対するエスケタミン点鼻薬とクエチアピンとの比較
Esketamine Nasal Spray versus Quetiapine for Treatment-Resistant Depression

A. Reif and Others

背景

治療抵抗性うつ病は,最近のうつ病エピソード中に 2 つ以上の連続した治療法に反応しないことと一般に定義され,寛解割合は低く,再発割合は高い.治療抵抗性うつ病の患者で,選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)による治療が継続されている状況で,エスケタミン(esketamine)点鼻薬を併用した場合の有効性と安全性が,クエチアピン徐放剤による増強療法を併用した場合と比較してどうかは明らかでない.

方 法

オープンラベル単盲検(評価者は群の割付けを知らない)多施設共同第 3b 相無作為化実薬対照試験において,患者を,SSRI または SNRI との併用で,エスケタミンの鼻腔内噴霧投与を(製品特性の概要に従って)可変用量で行う群(エスケタミン群)と,クエチアピン徐放剤を投与する群(クエチアピン群)に 1:1 の割合で割り付けた.主要エンドポイントは寛解とし,8 週目のモンゴメリ–アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)のスコアが 10 以下であることと定義した(スコア範囲は 0~60 で,数値が高いほどうつ病が重症であることを示す).重要な副次的エンドポイントは,8 週目の寛解後 32 週目まで再発がないこととした.すべての患者を解析に組み入れ,試験治療を中止した患者は,好ましくない転帰をとったとみなした(すなわち,寛解しなかった患者や再発した患者と同じ群に分類した).主要エンドポイントと重要な副次的エンドポイントの解析は,年齢と治療失敗の回数を調整した.

結 果

全体で,336 例がエスケタミン群,340 例がクエチアピン群に割り付けられた.8 週目に寛解が得られていた患者は,エスケタミン群のほうがクエチアピン群よりも多く(336 例中 91 例 [27.1%] 対 340 例中 60 例 [17.6%],P=0.003),8 週目の寛解後 32 週目まで再発がなかった患者も,エスケタミン群のほうがクエチアピン群よりも多かった(336 例中 73 例 [21.7%] 対 340 例中 48 例 [14.1%]).32 週間の追跡期間における寛解割合,奏効割合,MADRS スコアのベースラインからの変化は,エスケタミン点鼻薬のほうが良好であった.有害事象は,試験治療の確立されている安全性プロファイルと一致した.

結 論

治療抵抗性うつ病患者に対して,エスケタミン点鼻薬を SSRI または SNRI と併用した場合,8 週目の寛解に関して,クエチアピン徐放剤を SSRI または SNRI と併用した場合よりも優れていた.(ヤンセン EMEA 社から研究助成を受けた.ESCAPE-TRD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04338321)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1298 - 309. )