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November 9, 2023 Vol. 389 No. 19

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孤立性または本態性の頭部振戦に対するボツリヌス毒素の試験
Trial of Botulinum Toxin for Isolated or Essential Head Tremor

A. Marques and Others

背景

本態性頭部振戦の治療には A 型ボツリヌス毒素の局所注射が用いられているが,無作為化試験による広範な検討は行われていない.

方 法

多施設共同二重盲検無作為化試験で,成人の本態性または孤立性の頭部振戦患者を,A 型ボツリヌス毒素を投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.ボツリヌス毒素またはプラセボの注射は,無作為化日(0 日目)と 12 週目に,筋電図ガイド下で両側頭板状筋に行った.主要転帰は,2 回目の注射後 6 週目(無作為化後 18 週目)における変化の臨床全般印象(CGI)尺度の 2 点以上の改善とした.CGI 尺度(スコア範囲は 3 [非常に改善]~-3 [非常に悪化])は,頭部振戦のベースラインからの改善または悪化の程度に関する,患者の評価を記録するために使用した.副次的転帰は,ベースラインから 6,12,24 週目までの振戦の特徴の変化などとした.

結 果

120 例が登録された.スクリーニング中に 3 例が除外され,117 例が,ボツリヌス毒素群(62 例)とプラセボ群(55 例)に無作為に割り付けられ,intention-to-treat 解析の対象となった.ボツリヌス毒素群の 12 例とプラセボ群の 2 例は,12 週目の注射を受けなかった.主要転帰である 18 週目における CGI 尺度の 2 点以上の改善は,ボツリヌス毒素群では 31%で達成されたのに対し,プラセボ群では 9%であった(相対リスク 3.37,95%信頼区間 1.35~8.42,P=0.009).副次的転帰の解析では,6 週目と 12 週目の転帰は主要転帰の解析結果をおおむね支持したが,24 週目の転帰は支持しなかった.有害事象は,ボツリヌス毒素群の約半数の患者に発現し,頭頸部痛,後頸部の筋力低下,嚥下障害などであった.

結 論

孤立性または本態性の頭部振戦に対する 0 日目と 12 週目の両側頭板状筋へのボツリヌス毒素注射は,18 週目における重症度の軽減に関してプラセボよりも有効であったが,効果の減弱が予想される 24 週目には有効ではなく,有害事象と関連した.(フランス保健省から研究助成を受けた.Btx-HT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02555982)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1753 - 65. )