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July 20, 2023 Vol. 389 No. 3

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心臓のトランスサイレチンアミロイドの除去を目的とした抗体 NI006 の第 1 相試験
Phase 1 Trial of Antibody NI006 for Depletion of Cardiac Transthyretin Amyloid

P. Garcia-Pavia and Others

背景

トランスサイレチンアミロイド(ATTR)の沈着による心筋症(ATTR 心アミロイドーシス)は,ミスフォールドしたトランスサイレチンにより引き起こされる進行性の致死的疾患である.疾患進行を抑制する治療の進歩にもかかわらず,心機能障害を改善するために心臓から ATTR を除去する治療法はない.NI006 は,貪食能をもつ免疫細胞による ATTR 除去を目的に開発された,組換えヒト抗 ATTR 抗体である.

方 法

第 1 相二重盲検試験で,野生型または変異型の ATTR 心アミロイドーシスと慢性心不全を有する患者 40 例を,NI006 を 4 週ごとに 4 ヵ月間点滴静注する群と,プラセボを投与する群に(2:1 の割合で)無作為に割り付けた.患者を,用量漸増法で投与する(範囲 0.3~60 mg/kg 体重)6 つのコホートに連続的に組み入れた.4 回の点滴静注後,NI006 の用量を段階的に増量して 8 回点滴静注する非盲検延長期に患者を組み入れた.NI006 の安全性と薬物動態のプロファイルを評価し,心臓画像検査を行った.

結 果

NI006 の投与は,明確な,薬剤関連の重篤な有害事象を伴わなかった.NI006 の薬物動態プロファイルは,IgG 抗体の薬物動態プロファイルと一致し,抗薬物抗体は検出されなかった.シンチグラフィでの心臓へのトレーサー取込みと,心臓 MRI 上の細胞外容積は,ともに心臓のアミロイド沈着量の画像に基づく代替マーカーであるが,いずれも 10 mg/kg 以上の用量で,12 ヵ月の期間中は減少していると思われた.脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント(NT-proBNP)とトロポニン T の中央値も低下していると思われた.

結 論

ATTR 心アミロイドーシスと心不全を有する患者の治療薬として組換えヒト抗体 NI006 を検討した第 1 相試験で,NI006 の投与は,明確な,薬剤関連の重篤な有害事象を伴わなかった.(ニューリミューン社から研究助成を受けた.NI006-101 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04360434)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 239 - 50. )